14.Clock(時計)

 先日、鶴橋まで落語を見に出かけた。

 桂三度という落語家が、マンションの一階の小さな箱で落語をするのを最前列で見ることが出来た。

 その際、いまから掛ける演目はNHKの大会で掛けるものなので、持ち時間が決まっているのでどなたかに時間を計って欲しいと言われ、お客さんの一人がスマホのタイマー機能で時間を計ることになった。

 見事だった。

 一〇分の演目、一二分の演目、八分の演目。

 どれも一五秒ほど伸びただけでほぼ時間通りに収まったのだ。

 落語自体も創作あり古典ありで、その出来も素晴らいものだったのだが、このタイムコントロールの部分においてもさすがプロだなあと唸らされた次第である。


 沖縄時間(ウチナータイム)というものがある。

 要するに時間にルーズな県民性を表した言葉である。

 約束の時間には平気で遅れる。待っている方も気にしない。みんながみんなそんな感じだから、そもそもの集合時間を早めに言ったりとかして帳尻を合わすそうで、現代日本においてはなかなか常識から逸脱した感覚だと言えるだろう。


 でもそこに憧れる自分がいたりする。

 毎日毎日、時間に縛られて生活することに窮屈さを感じるときがある。

 分単位で正確にやってくるバスや電車を当たり前に感じ、少し遅れただけでイライラしてしまうのは間違いなんじゃないかと思うことがある。


 沖縄の方言で「てーげー」という言葉があって、直訳すると「適当」という意味なのだが、実際はもう少しポジティブなニュアンスを含んだもので、規則に縛られない、寛容な在り方も内包している。

 このおおらかさに憧れるのだ。

 他にも「いちゃりばちょーでー」という言葉があり、これは「会えば兄弟」という意味で、これはもう本当にすごい。都会に生きていると他人を警戒することが多い中、この言葉は出会ったことの奇跡をただただ楽しむという非常にシンプルで奥深い言葉だ。一期一会に近いが、もっと肩肘張らない感じとでも言おうか。

 

 時間に縛られず日々過ごし、出会った人と仲良くなり、笑顔になり、お互いいい気持ちになる。多少のことはてーげーですます。これが出来れば世界が本当に平和になってしまうんじゃないかと思う。


 ……といいながらこの投稿は分単位で投稿時間を設定できる予約投稿機能で投稿したりするのだが。

 いやはや時間との付き合い方はとても難しい。


 

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