12.Whale(鯨)

 鯨肉が給食で出た最後の世代だと思う。

 小学二年生までは給食の小さなおかずで鯨の大和煮というのがあった。

 正直、味は覚えていない。

 好きなものは覚えているし、嫌いで残したものも覚えている。

 味を覚えていないということは、好きでも無く嫌いでも無く、普通だったと言うことだろう。

 そう、普通だったのだ。

 鯨を食べることは日常的で、普通のことだったのだ。


 ネットで少し調べてみた。

 が、よく分からなかった。


 事実だけを書くと。

・日本は昔から鯨を捕って食べていた

・1988年に日本は商業捕鯨から撤退した

・捕鯨の事実が文献や浮世絵などで残っている


 ここから先はもう歴史学者の管轄になってしまう。

 日本は諸外国からの圧力によって捕鯨文化を剥奪されたともとれるだろうし、国際捕鯨委員会が日本の行き過ぎた捕鯨活動に対し、何度も警笛を鳴らしたが受け入れられず、個体数の減少が看過できないレベルで起こっていたためやむなく禁止措置を強要したともとれるわけで。


 前述の給食に出たという話も、食文化として普通だったと僕は書いたが、当時供給過多だった鯨肉を減らすために政府が給食への転用を促進したというような文章もでてきて、もっと詳しく調べてみないとこの辺ことは確証のあることは言えそうにない。


 ただ、やはり文化としては廃れているのは事実だろう。

 僕ら以下の世代ではきっと鯨肉なんて食べたことのない人も多いだろうし、これからもっと多くなるだろう。実際、ここ一〇年ほども調査捕鯨でとった鯨肉が流通せずに余っているという話もある。

 

 たった三〇年で歴史は塗り変わってしまうんだなあと実感する。

 父親が晩酌の時に食べていたあの真っ赤な鯨ベーコンも、あと一〇年もすれば食卓からすっかり姿を消してしまうのだろうか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る