第46話 幕間-7


 一年中、ジメジメとした地下牢。

 壁にはぬるぬるとしたこけが生え、カビ臭い匂いが鼻をついて離れない。

 その場所は、仕事で疲れた身体を休めるような場所ではない。

 仕事で陰鬱いんうつになった精神を、さらにその深みへと追い込む場所だった。


 リェンちゃんと、ファちゃんと三人で幾度となく相談した。

 ここから逃げよう。

 知り合いに相談しよう。

 上司に訴えよう。

 そうして実行したその全てが失敗に終わった。

 上手くいかなかった原因は、私達を指揮していた采女ツァィニュ

 外面そとづらだけは良い彼女は、あの手この手で私達の試みを退け続けた。


 私達に残された最後の手段は、犯罪に手を染めることだった。

 彼女を殺して、自分達も死ぬ。

 もう、それしかなかった。

 そう考えてしまうほどに、心が病んでいた。


 そんなある日、突然彼女がいなくなった。

 そして代わりに天女てんにょがやって来た。

 そう思えるほどに、その存在は私達にとって、救いの神となった。


 彼女が来て全てが変わった。

 それは本当に夢のようだった。

 あまりにも豪華で広々とした部屋を与えられた。

 舌がとろけるような素晴らしい食事を与えられた。

 ジャージという動きやすくて可愛らしい制服を提案された。


 今では三人共、ジャージのとりこだ。

 部屋着、仕事着、外出着と、それぞれの用途にあったジャージを作り着ている。

 友人が「私もそのジャージが欲しい」と言うので渡したら、たちまち友人の職場で、「それはどこで売っているの?」と話題になったらしい。

 そのことを彼女に話したら、「今度、大々的に販売しようかしら。その利益で、新しい人を雇えるかしら」とニヤニヤしながら、ブツブツ言っていた。


 彼女の名は、御堂河内みどこうち 美城。

 渾名は美城ちゃん。

 ちまたの噂では、タオ様と付き合っているらしい。


 でも、私達三人だけは知っている。

 これは、美城ちゃんと私達だけの絶対のヒミツ。

 それは「美城ちゃんは、天様と……」

 フフッ。

 これ以上は言えない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る