第47話 郵便(1)


 今日は一月振りのお休み。


 一月振り……。

 ブラックだわ。

 せめて週一でみんなが休みを取れるようにしたい。

 そのためにももう少し人手が欲しい。

 どこかから人が湧いてこないかしら。


 昨日は、月さん、恋さん、花さんに、「明日の休みは何するの?」と盛んに聞かれた。


「美城ちゃん、明日は天様とデート?」

「そうなの? 天様とか~。良いなぁ~。美城ちゃん、普段も私達に気兼ねせずに、お屋敷の中で天様とイチャイチャして良いんだからね」

「そうそう! 食事の時とか、ア~ンとかって食べさせてあげたりさ~」


 するか~!

 なんで私が坊ちゃんと……。

 ア~ンに、いい思い出はないのよっ!


 ってことで、お休みを貰ったんだけど……。

 さて、どうしよう。

 坊ちゃんと出掛ける予定は勿論ない。

 かといって、他の誰かと会う計画もない。

 自分の部屋でのんびりというのも悪くはないけど。

 取り敢えず、お腹空いたし朝食にしよう!

 ダイニングに行くと、坊ちゃんの弟のバオくんが一人で朝ごはんを食べていた。


 わぁ~!

 ゴハンを食べてる宝くん可愛い~!

 モグモグ、モグモグ。

 モグモグ、モグモグ。

 はぁ~。癒されるわぁ~。

 あ、食べ終わったのかな?


「宝くん、おはよー。今日は一人? お兄ちゃんは?」

「あ! おねえちゃん! おはようございます。おにいちゃんは、大事な会議があるから今日はボクはお留守番なの」

「そっか~。おねえちゃんも今日はお仕事お休みなの」

「お休み? じゃあ、おうちにいるの? ボクと遊ぶ?」


 可愛い~!

 あそぶ、あそぶ!

 あそんじゃうよ!


 フッフッフッ。

 チャンス!

 これは、ビッグチャンスよっ!

 これまで宝くんの部屋に入ろうとする度に、お前は入るなと、何度も坊ちゃんに阻止されてきた。

 しか~し!

 今日は邪魔者はいないっ!

 今日こそ!

 今日こそ野望を果たす時っ!


「ねえ、おねえちゃん、何して遊ぶ?」

「何して遊ぼっか~? 宝くんの部屋で遊ぼっか?」

「ボクの部屋? うん。良いよ!」


 やったぁ~!

 ついに、ついにこの時が!


 ◇


 おおぉぉぉ~!

 ここが宝くんの部屋。

 ベッドと机と本棚と衣装棚と……って、兄貴の部屋と同じじゃんっ!

 兄助め~!

 自分の部屋だけでは飽きたらず、弟の部屋まで自分色に染めるとは……。

 許すまじ!

 せっかく楽しみにしてたのに~。

 これじゃあ、まるで坊ちゃんの部屋にいるみたいだわ。

 全然落ち着かない。

 坊ちゃん本人が、どこからか突然出てくるんじゃないかと、そわそわしてきた。

 キョロキョロと部屋を見回す。

 そんな私の背後から宝くんの可愛らしい呼び掛けが聞こえた。


「おねえちゃん、ボクこれやりたいんだけど、一緒にやってくれる?」


 イヤーン! カワイイー!

 ナニナニ~?

 やるやる、やっちゃうよ~!


 クルリと後ろに振り向く。

 と、そこには可愛らしい小さな囲碁のセットが置かれていた。


 げっ!

 囲碁……。

 うぅぅ~。

 しばらくは見たくもないと思ってたのに~。

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