第15話 幕間-2


「なんなんだ、あの女は!」

「おっ! 天のお気に入りのあの子かい?」

「誰がお気に入りだ! クソッ」


 おやおや。

 また、何かあったのかな?


 天が烏龍茶を一気に飲み干す。

 少し落ち着きを取り戻したところで鎌をかけた。


「また、馬車で送ったのかい?」

「ち、違う! 平安宮の廊下で見ただけだ」


 平安宮の廊下?

 見ただけ?


「平安宮か。じゃあ、今度、僕も見に行って見ようかな」

「!! そ、そいつは掃除をしていただけだ。見に行っても仕方あるまい」

「ふ~ん。掃除をね……」


 随分と不機嫌だけど。

 その女が掃除をしている姿を見ただけで、不機嫌になるわけはないよね?


「天をそこまで怒らせるなんて、よっぽどテキトーに掃除をしていたんだね。その女は斬首にすべきだね」

「い、いや。違うんだ。普通なら誰も掃除をしないような廊下の天井を拭いていたんだが……、その、か、格好が、だな……」

「格好?」

「な、なんでもない。と、とにかく、少武シャオウが行く必要はない」


 ふ~ん。

 そんなに行くな行くなと言われるとなあ……。


「おーう! お前ら、二人して、こそこそとどうしたー?」

「いや、なんでもないよ。ジュンこそ何かあったのかい?」

「あー。女官達の噂話を聞いたんだがな。平安宮の二階にある長廊下を知ってるか?」


 窓の外に顔を向けていた天が、ぐるりと首を回し、目を見開く。


「ん? ん~。長廊下か~。滅多に行くことはないけど知ってるよ」

「あの廊下がな。とんでもなくキレイになったって、女官達が騒いでいやがってな。それなら、一目見に行ってみるかと思って、お前らに声を掛けに……」

「行くな! 行く必要はない!!」

「お、おい。いきなりなんだってんだ、天?」

「いいか、健。俺の声が聞こえるな? い、く、な!」


 ククククク。

 こりゃ~、いよいよ、見に行かないとかな。

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