第14話 配属(4)


 私の清掃場所は、なっがーい廊下。


 ホントに長い……。

 それに意外と広い。

 五人並んでよーいドン! って運動会の百メートル走ができるわ、きっと。


 ヨッシャ! いっちょやりますか~!

 制服のはかまそですそをたくし上げる。

 我ながらスゴい格好。

 かなりハシタナイ……。


 しょうがないよね。

 格好気にしてたら、ちゃんと掃除できないもんね。

 そもそも、なんで制服が袴なのかしら……。

 もう少し、動きやすい格好にして欲しいわ。


 掃除道具として貸し出されたのは、タライと雑巾のみ。

 固く絞った雑巾で、ひたすら廊下の雑巾がけ。

 雑巾が汚れたら、水を張ったタライで、すすぐ。

 そして、また、廊下をダダダダダ~! っと一直線に雑巾がけ。

 その繰り返し。

 これは、確実に明日、筋肉痛だわ……。


 気合いで、廊下の隅から隅まで、アリの足跡すら残さないほど拭ききった。

 そうなると、床だけでは飽きたらず、ついつい壁を拭き始めちゃったのよね。

 そうなると、ついでに天井もやりたくなるじゃない?

 空き部屋に丁度いい感じの椅子があったから、ちょっと拝借。

 椅子に上って、天井をフキフキ。

 うっわ~。雑巾が真っ黒。

 汚れが取れた~! って感じでチョー気持ちいい!


 フフフフ~ン。いい感じ~。

 上を見上げて、天井に手を伸ばし、ノリノリで拭いていく。

 そんな私の耳に、下から呼び掛ける若い男の声が入ってきた。


「なにやってんだ、お前」

「え? 天井拭いてるんですよ~」

「そんなことは見れば分かる! そんな格好で何をしているんだと聞いているんだ!」

「だ~か~ら~! 尚寝シャンチン係として、天子様のために天井を拭いてるんだってば!!」

「……え、あ、ん。……うん。そ、そうか」


 ん?

 天井を見上げていた顔を、床に下ろす。


 さっき確かに誰かに話し掛けられたと思ったんだけど。


 そこには誰もいなかった……。

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