作戦続行


「で、昨日の今日なのに、何であなたたちは普通なわけ? AとB」


 バックミラー越しに不満げな高槻さんの顔が見えます。車は昨日と同じように将軍橋交差点へと向かっていました。


「内心ウキウキですよ」

「ウキウキです」


 私とアカネBはそう答えますが、高槻さんは腕を組んで疑いの目を向けてきます。


「……全然、そうは見えないけど」

「来週には婚姻届を出す予定ですよ。そうだ、高槻さん、証人欄に名前書きますか?」

「えっ、いいの!? 書く!」


 なんというか、ある意味単純なお方です。


「まあ、文字通り目撃証人ですからね」

「ふふん。この私が証人になるからには、離婚はナシね。許さないから」

「離婚なんてしませんよ、そんな面倒臭いこと」


 すると、高槻さんは、座席の間から身を乗り出してきました。


「じゃあ、こうしましょう。どちらかが浮気したら、私が被害者の側に超一流の弁護士を用意する。浮気した奴は徹底的に潰すってことでいい?」

「そんな脅し要りませんってば。ていうか、シートベルトちゃんと付けてください」


 この車の中で一番ウキウキしているのは、間違いなく高槻さんでしょうね。この人、本当にお金を使って人を踊らせるのが好きなタイプのようです。


 さて、浮かれ話もそこそこに、立体駐車場へと到着しました。


 バズーカ砲こと八木アンテナを研修室に向け、アクセスポイントとルーター、そしてノートPCをスタンバイします。


「こっち、準備オーケー! ……です」


 と、我が婚約者。なんか知らないですが、キラキラと輝いています。


 ノートPCの監視はアカネBに任せ、私は双眼鏡で研修室の様子を探ります。今はまだ誰もいないようです。


 おっと、そこへ、ノートパソコンを持った鴨葱が現れました。アルティメットバグトリガーこと、英賀保芽依です。

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