聖超時空世紀銀河電磁最強機動戦記ロボ ペネ・グランデ

英知ケイ

私、戦いたくない!

 私はさっきからずっと走っていた。

 もう足はガクガク、息も切れ切れ。

 でも走らないわけにはいかない!


「待て、待ってくれ……待つのじゃ!セツコおおおおお!」


 後ろで父親の、天才科学者こと、ジュウゾウ・オオハラの声が聞こえている。

 父のことは尊敬していなくはない、ないのだが、でも、絶対に嫌!


「ちょっとだけ、ちょっとだけじゃああ」


 ちょっと泣き入ってるけど、でもね、もう私には通用しないんだからっ。

 嫌なものは嫌嫌!


「確かにさいしょは辛いかもしれん。しかし、きっとすぐに慣れる!」


 ああ、まだ追ってくる。

 ここ街中なんだけど、もうちょっと他の人の迷惑考えてよね!


「絶対に、のってるうちに気持ちよくなるから~~~~~」


 だから……!!!


 ああもう、なんていうか足痛いし疲れたしバカバカしくなってきたし、面と向かって言ってやろう。


 私は足を止めると、後ろに振り向く。

 その、私の目の前で、ペネ・グランデがゴウゴウと音を立てて着陸した。



 え?

 ペネ・グランデって何かって?


 そうね、私も父親に聞いてなかったら、わかんないかも。

 私の父親が作った地球を守るための、スーパーロボット、らしいの。

 大きさは近くの五階建てビルくらいね。

 

 ええ?

 「そんなの乗っちゃえばいいじゃん、地球の明日を救いなよ」ですって?


 ……まず、そのフレーズは滅亡フラグだからやめて頂戴。きっと北極と南極の氷が解けて洪水で全滅エンドになるわ。


 コホン、それで、乗りたくない理由なのだけど、

 ……

 ……

 あの形が生理的にダメ

 ……

 ……

 何回見ても、っていうか見たくない、っていうか

 ……

 ……

 ダメったらダメ!

 


 「大体どうしてそんな形なのよ!答えてよ、お父さんっ!!」


 私はペネ・グランデに搭乗している父親に向かって叫ばざるを得ない!

 すると、スピーカーを通して音声で説明が始まったの。


 「アニメのロボットと違ってな、空気抵抗を考慮するとやはりこの形なのじゃよ。足なんて飾りです。どうせ武器も基本飛び道具なんじゃから、内蔵でOK。だから手も不要。頭なんてもっと意味がないぞ、全方向にカメラ仕掛けとけばいいんじゃからな。マジでアニメのロボットに頭のっかってる理由ワカラナイ。というわけで、結論として空気抵抗の少ない胴体があればいいのじゃ!葉巻型UFOというのが昔流行ったが、あれは今考えると時代を先取りしておったんじゃのう」

「じゃあなんで、その葉巻の後ろ横に丸いの2つついてるのよ!それとっちゃってよ」

「これは亜空間ドライブエンジンじゃからなー、譲れんな」

「ひとつでいいじゃない!ひとつで!!」

「確かにひとつでも十分なエネルギー供給ではある……しかし!視聴率アップのためにセカンドシーズンの前にもう最初から2つ搭載してダブルにしておくのはありではなかろうか?PN粒子充填完了!」

「なんかやだ、絶対その粒子巻き散らかさないでよね……」

「すまん……もう……散布済」

「……」

「……セツコ、わかってくれ、これも地球を救うためなのじゃ。そしてお前は、PN適合者のひとり、それも最高の感応の持ち主。お前が、ペネ・シンコに乗ってくれれば奴ら等敵ではない!ペネ・シンコGO!じゃ」

「だからそのネーミングも嫌なの!嫁入り前の娘に何言わせる気よっ!このヘンタイっ!」

「仕方ないじゃろ、ワシ第二外国語スペイン語じゃったし。ペネ・グランデは5体合体じゃから、ペネ・ウノ(1)、ペネ・ドス(2)、ペネ・トレス(3)、ペネ・クアトロ(4)、ペネ・シンコ(5)であってるじゃろ?」

「……」

「イタリア語のほうがよかったか?ペネ・チンクエ(5)」

「さようなら……」


 私はため息をつくと、また走り出す。

 後ろで父の嘆きがさく裂しているけれど、知るもんか!


「まつのじゃ……わしは娘のお前と一緒に戦って勝利してチンチン(乾杯)したいんじゃああああ」

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