第53話

僕はポイントガードに向いているわけではない。

サッカーをしていた時は、

司令塔をしていたけれど結局うまくいっていたとは自分では思えなかった。

だから中学に上がったときに、知らない年長者にすすめられても、すんなり辞められたんだと思う。

僕は逃げた、んだと思う。


頼られることから、

’そのポジションの僕’から、

逃げてしまった。


でも僕はまた名称は違うけど、

’そのポジションの僕’になった。

でも前と全然違う。

全部一緒なわけではない。

だから、前のように逃げたいと思わなくなった。

きっとサッカーをしていた時に、梅田さんがサッカーをしていて、

そしてとんでもない奇跡で同じチームで一緒にプレーできていたら

僕はサッカーを辞めなかっただろうと思う。

それだけ、僕の中で梅田さんは大きい。


それだけ大きいけど、この合宿で少し変わった。

この人とバスケしてみたい、って思う気持ちができたのは初めて

それが何とも言えない思い、というかむずむずする感じで。


それはこの人に勝ちたい、とかじゃなくて

この人はどうやってプレーするんだろう、

この人と一緒の方向を見てみたいとか、

梅田さんとはまた違った思い。


ジョーくんの目には、コートがどんな景色に見えるんだろう。


よく言う、

足が速いとか、ドリブルが上手いとか、パスが上手い、

シュートが上手いとか、リーダーシップがあるとか、

そういう適材ではない。なんなら中学から始めたからほかの人より技術は足りないかもしれない。

ただ、よく人を観察している。

僕の役割は自分が一番よくわかっている。

臆病な性格だって、バスケにむいてるなんて思っていない。

だけど、どうしてもやりたい、っていう思いだけ。それだけで続けている。

でもどうしてバスケをやりたいのか、明確なことはわからないまま走っている。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

青春へのやり直し 野水 志貴 @mametibi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ