第52話

きっと、当時の僕ならいきなり年上にボールを渡すようなことはしなかった。

ちっぽけな意地なんだと思う。

でも、例えば同じチームでも負けた気がするんだ。

頼っているような感じが、自分が小さく見えてしまって、

誰と勝負しているのかわからなくなってしまう。

きっと、ここに当時の僕がいたらそうなっていた。


「梅田!パス!」


ハルヒから梅田に落とされたボールは対角線上にいた先輩にパスがだされた。

が、

「ナイス、梅ちゃん、ってあ!」

ボールにむかって速攻で向かってきた影にカットされてボールは奪われた。


「津島ー!パスこい!」

速いロングパスで一気に反対側にボールは飛んでいった。

ボールは白木に渡って一気にボールに入った。

先制したのは、センター不在のチーム。


「やるなぁ、あいつ。」

「一気に”流れ”、作っちゃいましたね。一見センターがいないチームは不利に思えましたけど。」

「津島君、聞いてた話では一番大人しいと思ってたんだけどね。1年であのテンションは中々じゃないかな。」

「そんな雰囲気なかったんですけどね。子供でもコートの上だと変わるもんですね。」

「ガードがひしめき合ってるチームだからなおさら、自分の役割について深く考えさせられる状況だ。どう動くか、短い時間でどれだけのことができるか、見ものだね。」

「子供の成長ははやいですからね。」

「たった1ゲームでも、とんでもないことが起こる可能性だってある。だが逆もしかりだ。だが、ここで伸びなきゃ世界で戦えないからなぁ、我々でビシッバシいきましょう。」


でも今ここにいるのは今の僕だから、僕自身に負けない。

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