第9話


 「きみたちは兄妹きょうだい?」

今度こんどあきらかにのぶくんにかって少年しょうねん質問しつもんしてきました。のぶくんはこの少年しょうねんなんだかあぶないやつおもえました。だとしたら、サエちゃんにきにはなしなんかさせてはダメです。

「そ、そうです。これからおじいさんのいえくんです。」

のぶくんは余計よけいなことまでってしまって、ちょっと後悔こうかいしました。

「おじいさんちでばんはんなの。」

と、サエちゃんもつづけました。

「そうか、いいな。」

少年しょうねんはちょっとさびしそうな表情ひょうじょうをしました。

 「で、どうしたの?」

サエちゃんがきます。

「そうだ。このへんおんななかったかな?」

少年しょうねんなんだか不安ふあんそうなかおいました。

おんなですか? こんな天気てんきだからだれませんでしたけど。」

のぶくんがこたえました。なにしろいまいえてきたところです、おんななんてたりしていません。

「そうなんだ・・・。どこっちゃったんだろう。オレがはなしたからいけないんだ。」

少年しょうねん今度こんどはしょんぼりとしたきながらいました。のぶくんは少年しょうねんすこし可哀想かわいそうになりました。

 「たよ。」

そのときサエちゃんが唐突とうとつったのです。

「え? たの?」

「うん。」

「サエちゃん。だれにもってないでしょ。」

のぶくんがサエちゃんのうそをたしなめようとしました。

 「あのだれなの?」

「うん。オレのいもうとなんだ。うるさいやつでさ、オレのうことなんかちっともきゃあしない。ちょっとはなすと勝手かってにどっかっちゃうし、いだしたらかないし。」

 少年しょうねんうのをいてのぶくんはサエちゃんみたいだなとおもいました。でも、そううといけないとかんじてだまっていました。

「でも、オレのだいじないもうとなんだ。さがしてるんだけどつからないんだよ。」

「あのね、さっきあそこの電線でんせんのところにいたの。」

サエちゃんはいえまどからえる電柱でんちゅうほうゆびさしました。

「ほんとに?」

少年しょうねんかがやかせてそっちのほうました。

「うん。あそこにいて、それからこうのほうにかけてった。」

そうって、ゆびみぎほうまわしました。

「サエちゃん・・・。」

のぶくんはやれやれというかんじでサエちゃんのうことをさえぎりました。

にいやもたよね。さっき、お部屋へやまどから・・・。」

 サエちゃんにそうわれてのぶくんもはっとしました。さっきサエちゃんがまどそとながらだれかいるとってたことにいたのです。のぶくんにはえなかったんですが、でもなにかいるようながしました。

 「ああ、あいつ、さきっちゃったのかな。しょうがないなあ。」

少年しょうねんはさもこまったというかおをしました。

「オレにはあいつをまも義務ぎむがあるんだ。」

少年しょうねんかおげるときっぱりといました。

「ギム?」

のぶくんには少年しょうねんうことがよくわかりませんでした。それでかえしたのです。

「そうさ、義務ぎむだよ。だってそうだろ、あいつはオレのいもうとなんだからさ。そうだろ。」

 少年しょうねんはそううとのぶくんのかおをじっとました。のぶくんはずかしい気持きもちになってせました。

 「で、でも、勝手かってさきっちゃうようななんでしょ?」

せながらのぶくんはボソボソと少年しょうねん反発はんぱつしました。

「そうなんだ、ちょっとはなすとさきっちゃうんだよ。でも、オレがはなしちゃったからいけないんだ・・・。」

 少年しょうねんはそううとぎゅっとをつぶりました。ひど後悔こうかいしているようです。はなしたことを反省はんせいしているみたいでした。やっとかおげたのぶくんは少年しょうねん姿すがた可哀想かわいそうおもいました。

 「でも、ひとりでさきっちゃったのはいもうとわるいんじゃ・・・。」

ちがうよ!」

少年しょうねん今度こんどおおきなこえしました。

「そんなんじゃないんだ。だってあいつはまだちいさいから仕方しかたないんだから。オレがちゃんとてなきゃいけなかったんだ。」

 少年しょうねんはそううと、またぐのぶくんのかお見詰みつめました。のぶくんはまたむねのドキドキがおおきくなってしたてしまいました。

 地面じめんには公園こうえんがたくさんちてさらさらながれていました。まるで、みずなかながれるようにかぜかれて地面じめんうえながれていました。

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