第8話 両親への報告

実家に帰省してから数日、両親にメイさんと交際していることを告げるか迷っていた。

両親から「早く私たちの孫の顔が見てみたい。お前も可愛い嫁さんと早く結婚してくれ」的なニュアンスの電話などを以前から受けていた。

流石に「猫と付き合ってます。ゆくゆくは結婚を前提に。」なんて言えない。むしろ、返答が怖い。


そうこうしているうちに、大晦日になった。


「…正直に言おう。反対されようがなんだろうが押し通す!嘘ついたとしてもいずれ、バレる訳だから本当のことを言おう。」

それまで、打ち明けるか躊躇していたが思い切って、両親にこのこと(メイさんとの交際)を報告することにした。


大晦日の朝

「ねえ?今、時間大丈夫?実はね、既に交際している女性がいるの。…で、その女性は猫なんだ。もちろんペットじゃなくて恋人みたいな関係。」

両親はしばらく黙り込んだ。そして、母が一言。


「ね、猫…。まあ、猫ちゃん可愛いからねえ。うーん…でも人は人じゃないといけないし、猫だって猫同士のほうが幸せじゃないのかね…?まあ、お前がその猫さんと付き合いたい、結婚したいなら好きにすればいい。」

母は予想に反して、あっさり承諾してくれたが父は相変わらず口を開かなかった。おそらく、心の中で激怒しているのかもしれない。


結局、父の回答を得られないまま翌日(元日・新年)を迎えた。

「今日、帰るね。長い間待たせてるから。じゃあ、また。」

途中の駅で約束の土産を買い忘れていることに気づき、慌ててその辺の土産を購入。


「メイさーん!!帰りました。はい、土産です。ごめんなさい、忘れてて途中の駅で買いました。」


「おお、可愛いわね。それにしても私にソックリの猫の置物ね。輪郭とかも似てるし。たまたま?ありがとうね、川原木。」

土産コーナーでは全く気づかなかったが、置物の猫がメイさんに偶然にもソックリだった。

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