第7話 帰省

久々に年末年始の期間を利用し、実家に帰省しようと思い身支度を始める。

荷物を整理している途中に、ふと頭にメイさんの顔が浮かんできた。


「メイさん、年末の期間を使って実家に帰ります。交際の報告とかも兼ねてですね。しばらく顔を見せに行ってなかったので。出来るだけ早めに帰ってくるから待っててください!」

と前日に実家へ帰省することをメイさんに伝えていた。


「じゃあ、こっちに帰ってくるのは年明けあたり?年末年始という短い間とはいえ近くに居ないって考えると寂しいわね…。なんか土産買ってきてよ、観賞物。食べ物はダメよ?(笑)」

本当は、メイさんと一緒に実家に連れて行きたいがあいにく実家が遠いという事情から長距離の移動は厳しいのではないかと判断し、悩みに悩んで家で待っていてと指示した。



川原木の実家

「ただいま~色々あって、なかなか帰って来れなかったんだ。ごめんよ~。」

「あ、おかえりー。ヤスの兄ちゃん、アタシのこと憶えてるよね!?忘れたなんて言わせないぞ!!」

実家に帰ると、いとこの高校生・礼が居た。どうやら礼も帰省していたらしい。


「れいちゃん、ただいま。お年玉はあいにく、今は持ってないんだ~。ごめんよ!あれ、お母さん(川原木の実姉)は一緒じゃないの?」

「おお、ヤスの兄ちゃん憶えてたか。お年玉無いなら仕方ないな…。今日は夫婦そろって体調を崩しちゃったから、一人で来た。電車と列車の乗り換え面倒だったなあ。」

まあ、この時期だから体調を崩しやすいけど、よく来れたなあ。やっぱ、礼は凄いな…。


「今ね、林業の仕事をしてるの。銀行は辞めた。あれ、辞めた事って連絡してなかったっけ?電話かメールのどちらかだと思うんだけど。」

両親の反応を見る限り、銀行を辞めた事の報告をどうやら忘れていたらしい。電話かメールで連絡した記憶ってのはもしかして違う用件だった?

「電話もメールも辞めたような趣旨の手紙も無かった気がする。いつ、銀行を辞めたの?」

と訊かれ、正確な日時までは憶えていなかったため、うろ覚えながら大体の日にちを答えた。

「銀行を辞めて、しばらくは大学の先輩のところに長らくお世話になってた。料理を作ったり、洗濯をしたりと主夫みたいなことをしてた。その傍ら、バイトの求人誌で見合う仕事が無いか探したりして面接もやったけど全部、不採用だった。

それで、ガラッと方向性を変えて林業の面接を受けたら採用になって、本当に感謝しているんだ。給料は銀行のときよりダウンになったけど銀行時代と比べ、やりがいを感じる。ただ、時期によっては全く仕事が無かったりするから、そうなると実質無職。」

現状としては、ギリギリ生活している状況で深刻といえば深刻となっている。

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