第六話 奴の名は、EIN。

 はい、一番タメになる回です。

 ちゃんとメモは……取らなくても、フォローして何度でも読んでくだされば大丈夫、大丈夫(ゲス顔)。



 さて。

 米国より例の「アレ」が届きました。



 奴の名は、EIN。



 あ、『カウボーイビバップ』に登場するデータ犬思い浮かべたアナタ、それは間違いです。大人しく『血界戦線』でも読んでやがるといいです。ビバ、内藤。



 EINは略称で、正式には E mployer I dentification N umber のこと。

 米国の社会保障番号の一つです。



 んなもん、お前に何のカンケーがあるのかと言われれば、オオアリクイ。そう、もちろん Kindle で使うからなのですよ。


 Amazon Kindle で電子書籍を販売する場合、どの国向けに販売し、購入されるかに関わらず、全てが米国内での商取引とみなされる、という不思議なロジックがありましてー。


 つまり何も手を打たずにのほほーんと販売していると、米国で所得税が課税されて、さらにその上に日本での所得税も加算される仕組み。俗に言う二重課税ということです。これ、言われないと分からない。Kinlde 作家の中には何も知らずに払い続けている人も多いでしょう。


 じゃあどうすればこの腐ったシステムから逃れられるかというと(ちょっとパンク風味)、カンタンに言うと『わっ、わたしはアメリカに何か住んでないんだからねっ! そ、そりゃあ、アメリカで商売して利益を得ているけれどっ! それでも……日本に住んでるんだからっ!』ということをツンデレ抜きで証明しないといけないのです。



 もちょい背景も含め。



 通常、米国で所得を得た場合には、当たり前のように米国内で課税されます。それと同じく、米国で発生した利子や株式の配当のような二次的な所得も米国内で課税されます。


 しかし、日米間には「租税条約」という取り決めがあるので、もしこの利益の受取人が日本の居住者である場合には、たとえ米国で発生した利子や配当等の所得であっても日本の方で課税される、と定められています。


 となると、本来は日本だけで課税されるはずですが、困るのは米国側。


 Amazonはもちろん、銀行や投資会社等も、受取人に利益を支払う際に、いちいち受取人がどこに住んでいるのかを確認しなくてはなりません。代金や利息や配当金を支払う際に、源泉徴収をする必要があるかどうかを確認する必要がある、ということです。


 かといって、彼らは率先してそれをしません。


 返せ!と言われでもすれば渋々対応するんでしょうけれど、勝手に払っていただいたものをいちいち返して回るような奇特な連中ではないのです。そこで自己防衛として「私は米国に住んでいない、日本の居住者である」ということを先んじてAmazonに申告しておく必要があるのです。




 そう、その書類こそが、W-8BEN。




 はい?

 さっきと違う?


 いやいや、急いてはいかんぞ、旅の方。



 W-8BENというのは通称(?)で、正式名称は Certificate of Foreign Status of Beneficial Owner for United States Tax Withholding。このままではイミワカンナイ!(from マキちゃん)なのでGoogle翻訳にかけると「米国税源泉徴収のための受益者の外国資格証明書」。意訳するなら「米国で商売する人向け海外在住証明書」というところでしょう。


 最終目的はこの「W-8BEN」をAmazon社に提出すればいいんですけれど、この書類の中にEIN(米国納税者番号)を記入する場所があるのですな。やっとキタコレ。



 しかし、この申請ならびに取得がタイヘン、と巷では大評判。



「EIN」は「IRS(米国内国歳入庁)」が発行するのですが、こいつらの対応がマジでドS。一か所でも間違っていると却下されるし、そもそもNGの場合に「再申請PLZ」なんて連絡はしてくれない。申請受付はFAXのみで、フツーに不備のない書類を送っても審査から発行までに三週間は余裕でかかる。どのくらいタイヘンかと言えば、運転免許の代書屋的な『EIN取得代行サービス』なんてのもあるくらい。費用は米国までのFAX通話料だけだけれども……。それにしても日本では考えられない対応の悪さ。思わず不安になってもう一回FAXを送りつけると『君は何故二回もFAXをしてきたのか。こちらはきちんと処理しているのに邪魔をしないでもらおう』的な返信を貰った人もいるとかいないとかー。



 でも取れちゃいました。



「EIN取れちゃいました」と、クリ剥いちゃいました(いかん、カタカナで書くと卑猥になった)的なノリで無事取得できました。



 取得申請にあたっては「Form SS4」という書式を使います。私が何なく取得できたのは、竹の子書房さんのページを参考にしたおかげだと思います。心より感謝!




 ・減免措置のための手続き

 http://www.takenokoshobo.com/kdp/taxfree-sample.htm


 ・Form SS4(PDF)

 https://www.irs.gov/pub/irs-pdf/fss4.pdf




 このページには「W-8BEN」の記入例もあるけれど、今は Amazon Kindle のアカウントページからウェブで申請できます。



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 KDPへアクセス

  ↓

 ページ右上の「〇〇〇のアカウント」をクリック

  ↓

 ID/PWでログイン

  ↓

「アカウント」の二項目目の「税に関する情報」で「税に関する情報を更新する」をクリック

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



 ここからは駆け足で、



-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-

 私は、私の 電子署名を提供することに同意します。→「はい」にチェック

 私は、私の情報を報告する書類を電子的に入手することに同意します。→「はい」にチェック

  ↓

 税制上の観点から、あなたは米国市民、米国居住者、米国パートナーシップ、米国企業のいずれかに該当しますか?→「いいえ」にチェック

  ↓

 個人情報に関して聞かれるので全てに記入する

  ↓

 あなたの居住国で納税者番号の交付を受けている場合は、その番号をここに入力してください。→日本の納税者番号を書く必要はないのでスルー

  ↓

「米国人かどうかの判定(個人)」に当てはまらないことを確認してチェックなしで次へ

  ↓

 あなたはTINを持っていますか?→「はい」にチェック

  ※EINを取得していない場合には、ここから申請ができる、とのこと。

  私はここから申請していないので、真偽のほどは不明です……。

  ↓

「社会保障番号(SSN)、個人納税者番号(ITIN)、またはEmployer Identification Number(EIN)」の欄に取得した「EIN」を記入、「これは私のEIN番号です。」にチェック

  ※申請のタイミングにより「過去六〇日間以内に納税者番号(TIN)を受け取りました。」にチェックを入れること

  ↓

 あなたは米国でサービス、製品または商品を販売する事業を経営または所有していますか。→「いいえ」にチェック

  ↓

「あなたの所得税制上の居住国が上記と異なる場合、さらに、米国とあなたの居住国との租税条約第4条に規定されているテストをすでに行っている場合は、ドロップダウンリストから適切な国を選んでください。」→「日本」を選択

  ↓

 Amazonとあなたの契約に基づいて、租税条約の恩恵の対象となる所得の分類をRoyaltyと判断しました。→次へ

  ↓

 以下を確認の上、全てチェック


 1. 私は、本書式に記載するすべての所得の受益者(または、受益者に代わって署名することを承認された者)です。

 2. 受益者は米国人ではありません。

 3. 本書式に記載する所得は、(a)米国における取引または事業の行為に事実上関連しません、(b) 事実上関連しますが、所得税の条約の下で課税の対象となりません、または、(c)パートナーシップの事実上関連した所得のパートナーの取り分です、かつ、

 4. ブローカー取引または物々交換取引において、受益者は命令で規定された免除された外国の個人です。


 さらに「署名」「日付」等を記入する

  ↓

 記入済みの「Form W-8BEN」が表示されるので、確認して Amazon へ提出する

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



 さて。


 最後の画面で「受け付けたぜ! 審査終わるまで待っててくれよな!」てなのが表示されたことでしょう。また、勝手に申請フォームは閉じて元の「アカウント」画面に自動的に戻ると、「税に関する情報」のステータスが「完了」になり、さらに「源泉徴収率」が元の「三〇%」から「〇%」になったはずです。



 お疲れ様でした。




 一応、これにて以上となります。



-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+- なにぶん四年前の情報となりますので、こいつは古いぜ!というご意見・ご報告あれば承りつつ、修正もしくはそれも難しい場合には記事の取り下げを行いたいと思います。

-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-+-



 では、貴方のデジタル出版ライフに幸多からんことを。

 お役に立ちましたら幸いです。ぺこり。



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「KDP」についてまとめてみよう 虚仮橋陣屋(こけばしじんや) @deadoc

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