第7話 〖ナポリ港出港〗

ミンニ提督とリッキータはガリオン船(⛵⚓ブオノ・パオロ号)に乗り込み、直ちに出港した。


既にも水も食料も補修資材も備えて、乗組員達、即ち

▷ピロート{航海長}、

▷コントラ・マエストロ{掌帆長}、

▷マエストロ{下士官}

等々水夫達も乗船していたからである。


出港直前、ナポリ教会の神父が見送りに来た。


神父『貴方達の旅の御無事を御祈りしています』


ミンニ提督🐭🎀『神父様、ありがとうございます』


神父、ミンニ提督『アーメン』


   ………………………出港~~~~!!!


………………………航海開始から5時間程過ぎた頃の事であった。


ミニー提督は副官リッキータを呼び、共に甲板へ上がった。


ミンニ提督🐭👒『良い天気ね』


リッキータ「へえ!実に快晴でさあ。

気持ちの良い航海日和ですね」


ミンニ提督🐭👒『ヴェスヴィオ火山🌋も美しいわ』


リッキータ「いつも火山爆発噴石まみれのヴェスヴィオも、今日は大人しくしてくれてやすね。


きっと提督の出港の門出を祝ってくれてるんでげしょう!」


ミンニ提督🐭👒『ウフフそうだと良いわね。


………………ねえ、リッキー。

あのね、話しておきたい事があるの』


リッキータ「はい。

何でげしょう?

提督」


ミンニ提督🐭👒『今日は4月27日だったわね。

実はね………………船の食料の事なんだけど』


リッキータ「へえ」


ミンニ提督🐭👒『………あのね、7月中旬迄の分しかないの』


リッキータ「え?」


リッキータは言われている事の意味が判らなかった。


リッキータ「何ですって?

提督」


ミンニ提督🐭👒『船の食料がね、約2ヶ月程度の分しかないのよ。


管理係の水夫に何度確認させてもやっぱりそうなの』


リッキータ「え………………ええ!?

えええええ!!!!!」


リッキータは驚き、困惑した。


リッキータ「そ、そんな!

まさか………提督!

行き先は新大陸ですぜ!


この鈍重なガリオン(ガレオン)船だ。

どんなに早く着こうとも1ヶ月半はかかる。

通常は2ヶ月だ。


もし途中で風向きが悪過ぎたりして、遅くなればそれでギリギリ持つか持たないかですぜ。


なんせアトランティコ(大西洋)横断なんだ。


ずっとマーレ・オチェアノ(海洋)だから、途中で補給港が無い。


万が一、暴風雨に襲われれば、船は流され大幅に遅れて、完全に持たない!

我々は飢えて死んでしまいますぜ!!

提督!」


ミンニ提督🐭👒『ごめんなさい………………あたしの管理不足だわ。


前回、確認した時にはちゃんと3ヶ月分はあったのに。


船の中に、鼠でも入ってかじったのかしらね?


チェシャの奴、ちゃんと仕事してるのかしら?


………………あら、噂をすれば影がさす………ね(笑)。

チェシャ、こっちにいらっしゃい』


二人の前に一匹のペルシャ猫😸が現れた。


毛並みは長く美しく優雅。

そしてその表情は何とも愛敬のあるニタニタ顔であった。


この猫はチェシャと呼ばれており、ミンニ提督の飼い猫で、ブオノ・パオロ号⛵船内にて放し飼いにしてあった。


この猫が、懐こうとミンニ提督の側に擦り寄ろうとした時であった。


猫がリッキータを見るなり、ピクッと一瞬全身を震わせたと同時に目は見開き口をムの字にし、【構え】のポーズをし尻尾を上げた。


そしてリッキータを睨み付けると同時に口から牙を出して息を荒げた。


チェシャ😾『フーーーー………!』


ミンニ提督🐭👒『あっあらっ!?

どうしたのかしら!?

この仔、人見知りする仔じゃないのに!』


リッキータは、猫の表情を見て咄嗟に思い出した。


❪あーーー!!!!!

あれはあれは!!!!!❫


        ⚪

        ⚪

        ⚪


それは、この航海の約一ヶ月前の事であった。


リッキータは、前回の航海を終えた直後に受け取った手当金・報償金の類いを、全て飲み食いに使い果たしていた。


当然、食べる物が無く飢えていた。


何か食い物になる様な物がないかと、ナポリ港をうろうろとさ迷っていた。


そこに、一隻の大きな船【ガリオン級】がやってきた。


❪ほう………これはでかい船だな。

ナオ船やカラック船よりも、さらに一回り大きい。

………だが果してガリオン船か?

砲台にカンノーネ【大砲】が設置されてない。

どうやら軍艦ではなさそうだな❫


リッキータは、これは船の食料を拝借出来るかも知れないと踏み、少し離れた場所から様子を伺っていた。


❪昼間は駄目だな。

見張りが居る。

狙うなら夜………いや、人気の無くなる深夜だ❫


リッキータは、人っ子一人誰も居ない深夜迄待ち、ガリオン船と思われる船の近く迄来た。


埠頭には見張りを含め誰も居なかったが、船は岸辺から少し離れた洋上にロープで繋ぎ止め係留していた。


❪やはりな。

盗人対策で直接渡れない様にしていたか❫


リッキータは頑丈で特殊なグローブでロープを掴み綱渡りした。

ナポリ、深夜1時気温、現在の摂氏で6℃程度。


海風のせいで実際にはそれよりも低く感じられる。

しかし、リッキータにそれは全く関係なかった。


❪飯🍚!飯🍚!飯🍚!………………………❫


両手のみで、非常に危険な洋上綱渡りである。


誰かに見付かり、殺される。

或いは、訴えられ逮捕されるかもしれない。


疲れや恐怖で落ちて、スクアーロ【鮫】の餌食にされるかもしれない。

普通はそう考える。


しかしリッキータは動物的本能で食料の事だけ考え続け、渡りきってしまった。


リッキータは日の出ている明るい時間帯に、少し離れた位置から船をよく見ており、大体の構造を把握していたので、真っ暗でも船室入口をすぐに見付け出せた。


❪しめた………鍵が掛かってない!❫


鍵の掛かってないドアを開け、そこでリッキータは携行していたランタンに灯を灯した。


この位置ならば漏れる明かりで人に気付かれる心配は無いからであった。

リッキータはランタンを邪魔にならない様、天井に吊るした。


❪おっ!

ここは食堂だな!

幸先が良い。

すぐ調理出来るな❫


リッキータは、周りにある樽を開け、中を確認した。

中身は食料品であった。


❪おお!好物の塩漬け肉🍖!

しかも新鮮だ!

焼いて喰おう!❫


リッキータは、食料品を調理して食べ始めた。

リッキータの胃袋は無尽蔵。


普通の人の15人前分食べる事等造作もなかった。

忽(たちま)ち樽の中身が減って行く。


………そこへ、小さな生き物が忍び寄ってきた………………。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る