第6話〖新大陸調査団の統治情況調査報告〗
………………………それから約半年後。
兵士💂『女王様に申し上げます!
新大陸より、査閲団が戻りまして御座います!
査閲団員一行は女王様に直接、調査結果を報告したいと申しております!』
イサベル女王👸『おお!!
待ち兼ねたぞ。
直ぐにでもここへ通すのじゃ!』
兵士💂『ははっ!』
その後、査閲団員達が女王の間にやって来て、イサベル女王を前に全員が敬礼した。
その団員の長官であるホァン・デ・アグアド査閲団長が進み出て述べた。
アグアド調査団長『女王様。
カスティーリャ王国統治領特秘査閲団・新大陸方面部員、只今帰還致しまして御座います。
新大陸に於いての現在の統治情況を秘密裏に査閲し終えましたので、御報告させて戴きます』
イサベル女王👸『おお!!!
アグアドよ、
して、首尾はどうであったかの?
現地での統治情況は?
勿論上手くいっとるのじゃろ!
コロンの奴隷の件は濡れ衣だったのじゃろ!!
のう!! のう!! のう!! のう!! のう!! の』
アグアド査閲団長『査閲結果を申し上げます!!!!』
アグアド査閲団長はイサベル女王の言葉を遮る様に、報告書を読み上げた。
アグアド査閲団長『新大陸総督クリストバル・コロンは、赴任早々、自身の部下に命じてサン・サルバトル島先住民アラワク族から真珠や宝石の類いを大量に強奪していました。
【※】
その際、渡す者は奴隷にし、渡さない者は、構わず殺害していました。
またアラワク族に限らず、周辺の島に住むルカヤン族、カリブ族、タイノ族もコロンの部下の横暴に遇い、同様にされました。
その後、彼等先住民達はコロン一行に抵抗の意を示しました。
彼等はコロン一行は天の使いなどではなく、危険な侵略者であるとの認識を抱いた様です。
これに対してコロン率いる戦闘部隊は、何等容赦せず大虐殺による非人道的弾圧を行ないました。
コロンは彼らをインディオと呼称し、まるで動物でも狩るような殺戮を延々と繰り返しました。
罪のない先住民族達は財産をあるだけ奪われ、次々に殺されていきました。
女は強姦され、殺されなかった男達も酷い拷問を受けました。
その後、コロンが一時的に病により床に臥せり、指揮官不在の為に統率が乱れました。
その事により、虐殺はさらに苛烈極まりました。
コロンの部下は村々へ
母親から乳飲み子を奪い取り、その子の足をつかんで岩に頭を叩き付けた者も居ました。
また、大笑いしながらふざけて乳飲み子を仰向けにしたまま川へ投げ落とし、乳飲み子が川に落ちると、
『畜生、まだじたばたしてやがる』
と叫んだ者たちもいれば、
先住民の身体を乾いた藁で縛り、その藁に火をつけ、彼らを焼き殺した者もいれば、先住民を生け捕りにしようとした者たちも居ました。
彼らは、木の叉に、小枝や枝で編んで作った鉄網のようなものを載せ、それに彼らを縛りつけ、網の下からとろ火で炙ったのです。
すると先住民の首長達は苦痛に耐えかねて悲鳴をあげ、絶望のうちに息絶えました。
一度、私自身も、有力な先住民の首長が4,5人、そうして火炙りにされているのを目撃しました。
首長達が非常に大きな悲鳴をあげたので、コロンの部下の部隊長は哀れに思ったのか、それとも安眠を妨害されたからか?
何れにせよ、火炙りをやめて絞首刑に処すよう命じました。
ところが、彼を火炙りにしていた
そうして、結局、
その光景は、我々調査団ですら、
犬をけしかけて先住民を八つ裂きにさせたり、手足を切断したり、鼻をそぎ落としたり………。
また、その犬の餌として大勢の先住民をまるで豚の群れのように、鎖でつないで連れて歩いていたというのです。
コロンの部下は、先住民を殺しては、その肉、すなわち人間の肉を公然と売買していたのです!
また、こんな事を言っておりました。
『この犬に食べさせてやりたいので、そいつの四半分の肉を貸してくれないか?今度俺のインディオを殺したら返すからよ』
『やつらを15か20くらい、俺の犬に食わせたよ』
殺害された先住民達の数、統治後から鑑みておよそ7万人!
しかし、今後更に増加の一途を辿る見込みです。
コロンが病から回復した後も、非人道的暴行が辞めになる事はありませんでした。
コロンは、先住民達に言いました。
『この地の何処かに黄金が眠っている筈だ!
これを見ろ!!
これが、見本の金だ。
【※】
これと同じ物か、若しくは似た物を探せ!!
探さなければ容赦なく殺すぞ!!』
従わぬ部族が居たところ、見せしめとしてコロンが直々にその部族の首長の手首を切り落としたのを見たという報告も御座います。
コロンは先住民達に、執拗に金を探させました。
コロンが新大陸総督・監督権を望んだ理由は、まさしく己の欲望………………金の入手に他ならなかったのです!
【※30】
コロンが部下と供に要塞を出て外出した隙に、我々は要塞の中を調べました。
その折、コロン直筆の手記を見付け入手し、証拠として持ち帰りました。
それがこちらです。読み上げます』
イサベル女王👸『待てい』
アグアド査閲団長『はっ!』
査閲団長がイサベル女王を見上げると、女王の顔は既に顔面蒼白となっているのが
イサベル女王👸『それは妾が直接読むとしよう。
渡してたもれ』
アグアド査閲団長『ははっ!!
ではこれをどうぞ!』
アグアド査閲団長がコロンブスの手記を女王に渡すと、敬礼した。
イサベル女王👸『調査及び報告、誠に誠に御苦労であった。
下がって良い』
アグアド査閲団長『はっ!!
ではこれにて。
失礼致しました』
アグアド査閲団長が査閲団員達と供に女王の間を出ていこうとした際、ふと女王の方に振り向いた。
すると既に、イサベル女王の目の焦点は合ってなかった。
即ち、右の眼と左の眼が其々あべこべの方向へと向いていたのである。
アグアド査閲団長は目を凝らして驚いた。
❪何という事だ………!
あの快活で天真爛漫、尚且つ圧倒的覇気を誇るあの女王様が、今はその面影すら無いではないか………!❫
査閲団員の全員が女王の間を出て行くと同時に、イサベル女王はコロンブスの手記を読み始めた。
イサベル女王は数年前のコロンブス企画の議会の最中、書簡のやりとりでコロンブスの
従って当然、本当にコロンブス本人の書いた手記かどうかを確かめたかった。
この時、手記がコロンブスの字でなければ、或いはまだましであったかもしれない。
しかしながら、そこに書いてあったのは、間違いなくコロンブスの字であった。
手記を持つイサベル女王の手が、わなわなと震え始めた。
だが、その震えは次第に大きくなっていった。
胸の鼓動が高鳴る。
«ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!ドック!»
📖❰私がインディアに到着するとすぐに、私が見つけた最初の島で、彼ら原住民たちに、私に差し出さなければならないものがこの品々の中にあるのかどうか教え込むために、私は力ずくで原住民の何人かを連行した。
・ ・ ・
原住民たちは所有に関する概念が希薄であり、彼らの持っているものを
『欲しい』
といえば彼らは決して
『いいえ』
と言わない。
逆に彼らは
『みんなのものだよ』
と申し出るのだ。
彼らは何を聞いてもオウム返しにするだけだ。
彼らには宗教というものがなく、たやすくキリスト教徒になれるだろう。
我々の言葉と神を教え込むために、私は原住民を6人ばかり連行した。
・ ・ ・
彼らは武器を持たないばかりかそれを知らない。
私が彼らに刀を見せたところ、無知な彼らは刃を触って怪我をした。
彼らは鉄を全く持っていない。
彼らの槍は草の茎で作られている。
彼らはいい身体つきをしており、見栄えもよく均整がとれている。
彼らは素晴らしい奴隷になるだろう!!
・ ・ ・
部下と共に、私は彼らすべてを征服し、思うままに何でもさせることができた。
・ ・ ・
彼らが必要とするだけのありったけの黄金………………彼らが欲しがるだけのありったけの奴隷を連れてくるつもりだ。
【※】
このように、永遠なる我々の神は、一見不可能なことであっても、主の仰せに従う者達には、勝利を与えるものなのだ❱
………………………………………………
イサベル女王の潤んだ瞳から悲しみの欠片が頬を伝ってこぼれ落ちた。
そしてアランブラ王宮内に悲痛な叫び声が響き渡った。
‘いやああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!’
⚪
⚪
⚪
ミンニ提督はこの話を親しい友人から聞いていた。
【※31】
❪………………………私はあの過ちを絶対にしない!
あの悲劇は繰り返してはいけないわ………………………❫
リッキータ「Ammiraglio!(提督!)」
ミンニ提督はリッキータの方を向いた。
リッキータ「提督どうしやした?考え事でげすか?」
ミンニ提督🐭👒『………何でもないわ。
さあ、行きましょう!』
こうして彼等は王宮を出てナポリ港へと向かったのであった。
………………………第7話へ続く
第6話 注釈解説
【※】
▷これが見本の金………この時、コロンブスは自分が身に付けていた首飾りを新大陸先住民達に見せ付けた。
【※30】
▷己の欲望………コロンブスは実に強欲であった。
カスティーリャ王国に記録されてない陸地を発見した者には、王夫妻から別途褒賞金が与えられるとされていた。
コロンブスは自分の部下が先に発見したのにも拘わらず王夫妻の前で
『私が最初に陸地を発見したのです!!』
と言い張り、これをせしめている。
他にも、真珠の発見を王国に全く報告せず、これを一人占めしていた。
【※】
▷彼ら………言うまでもなくカスティーリャ王国の王夫妻の事である。
【※31】
▷親しい友人………ミンニ・ロッサと同じイタリア出身の、若い男性の友人。
ラテン語のクラスで一緒であった。
その者とコロンブスとでは世代が違うが、その者の父親がコロンブスの事をよく知っていたらしく、詳しい話を聞かせていた。
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