ちょうしいいですよ。
午後11時59分――
歯を磨き終えた僕は俯き加減に暗い廊下を歩く。先には、明るい部屋、その中の右に見えるはふかふかソファ。僕は歩調を速める。最終的には頼りない駆け足(のような何か)となり、明るい部屋へと突入。少し右にカーブを描きながらソファに向かって1歩、2歩。
3歩目の右足を大きく振り上げる。体はソファと平行。勢いに任せて左足でカーペットをける。宙にふわり、とまう体。空気が心地良い。右手を力一杯下に振り、体を回転させて――
ぽすん、とソファにダイブ。ギイッと音がなる。体育の時間で走り高跳びの時やった「ベリーロール」という飛び方の応用。時刻は丁度午前12時。迫力満点の飛翔を終え、まず1番に襲ってきたのは、
――あ、足腰が限界だ……。
そう、凄まじい倦怠感だった。特に足は、何か痺れているような感覚でいつもより重く感じる。夏休みも終わり、そうそう地獄のクラスで現実を見せられた上での体育祭練習。肉体労働。おかげで今日はいつものように振る舞えずいつにも増してきつい一日となった。結果、これだ。
今日は調子悪かったな……と何度目かボヤき。こういう日ってずっとボヤきたくなるよね。まあボヤいててもしょうがないな。僕は諦めて明日のことを考えることにした。
途端、溢れ出る過去の記憶。
数秒後、僕は身をよじり、思った。
――あれ……?今までに調子の良い日なんてあったか……?
いかん、涙が出てきそうだ。まさか僕の日常がこんな悲惨だったとは……。
嘘だ。僕はまた思った。そんなはずはない。僕にだって調子良かった日が……。
人間、事実を認めるのは困難な事で、落ち着いて結論を出すのに3分弱かかった。
結論、調子良い日なんてありませんでしたー! はあ、辛。
じゃあ調子良い日って思ってたのはなんだったんだよ。そんな問いにも今はすぐ答えられる。
その日の気分。結局は、それにより判断されるのだろう。その日じゃないとわからないからこそ、今では見つからないのだ。じゃないと僕は女子にキモイと言われて「今日は調子良いな!」って言う変態になってしまう。
思い出は変化する。ならば大人になった僕は、思い出に何を視るのだろう。そんな物思いにふける。気分は少し楽だ。
僕はのそりと立ち上がり、震える足腰で大幅にずれたソファをなおし、風呂に入ることにした。楽しみは最後に取っとくのが正解だね!
ふぃ〜、気持ちいい……。
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