『生きる悲哀と臨床家』 神木 清隆様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054882784960


精神医学や心理学に興味をお持ちの方に、是非、お勧めしたい作品があります。

それが、こちらです。


主人公は、自身も発達障害を持つ臨床心理士です。

彼は様々な臨床家と自ら出会うチャンスを作っていき、魔法のような心理療法を習得していきます。


ただ、それを存分に活かすには、彼の勤める児童養護施設は難しい職場です。

スタッフは知識に乏しく非協力的で、一見、優しそうな園長も理解があるとは言い難いのです。


発達障害等の障害故に問題行動を起こす子供も、他のスタッフには障害を理解されず、適切な接し方をしてもらえないまま、過ごしているケースもありました。

また、自覚のない障害を抱えたスタッフもいました。


そんな人々と、主人公は何とか繋がりを持っていこうとします。


私自身も発達障害があり、臨床心理士ではないのですが、専門職として働いています。


発達障害者は、激しい能力の凹凸があります。

よく「そんなの皆同じ。苦手な事は誰にでもある」と言われますが、その苦手な事と得意な事の差が、定型発達者(一般の人)と比べてあまりにも大きく、社会生活する上で大きな障害となってしまうのが、発達障害です。


発達障害者は、この社会でどうすれば生きていけるのか、深く悩みます。

私は専門職としての資格と知識で、乗り切ろうと考えました。

そこが、主人公と似ていると思います。

だからこそ、主人公が新しい知識や技術を得ようと、常に新しい出会いを求める姿に釘付けになりました。


また、決して協力的ではない職場で、それでも自分の力を活かそうとする姿も、素晴らしいものでした。


そして、まるで超能力のような心理療法の数々も、大変興味深いです。


少々専門用語が多く、難しく感じる方もいるかもしれませんが、その時は附録で用意されている用語集が役に立つと思います。


お読みいただければ、必ず新しい知識が増えると思います。

また、ストーリーも純粋に楽しめます。


是非、ご覧ください。

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