第7話

時間が過ぎて、外はもう夕方になっていた。僕たちは何回もかくれんぼを続けていた。お互いに鬼を交代しながら見つけたり、見つけられたりしていた。彼女は楽しそうだった。僕は途中で飽きてきたけど、彼女が楽しそうに見ていると、そんな気持ちはなくなった。

「もう、帰らなきゃ。また明日ね!」

僕が帰ろうとすると悲しそうな顔をするのだが、すぐに笑顔になり、「うん!また明日ね!」とだけ言って、去って行く僕に大きく手を振ったのだ。



僕たちは次の日も、その次の日も、ずっと遊んでいた。僕は、岐阜で出来た友達があまりにも嬉しかったので誰にも言わなかった。初めは、お父さんとお母さんに話そうと思ったけど、僕だけの秘密にしたいと思い話すことはなかった。おじいちゃんとおばあちゃんは、同い年くらいの友達が出来たことは伝えていた。二人とも安心したように、「そうか、そうか」とだけ言って微笑んでいた。


八月の中頃になった時には、すでにモモカとは親友のように仲良くなっていた。毎日、一緒に遊んでいるだけだったが互いのことを話すことはなかった。でも、それでも良かった。ただ楽しくて、このままずっと岐阜にいたいと思ったから。


8月の下旬に差し掛かると、岐阜の暑さにも慣れて来た。後一週間で岐阜を離れると思うと、胸が締め付けられる思いがする。今日もいつものように彼女の所へ向かおうとした時、道端で一人の男の子に声をかけられた。

「お前、どっから来たんや?」

岐阜独特の訛りが入っていたので一瞬聞こえなかったのだが、それよりも声をかけられたことに驚いて動けなかった。どう反応したらいいのか分からなかったので、「え、あの、その…」と戸惑っていると、険しい顔をして男の子が僕の方へ近づいて来た。どうすればいいのか分からず、僕は動けなかった。


「お前、友達おらんのやろ?そんなら、俺たちと遊ぼうぜ!」


顔をくしゃくしゃにして笑った男の子は、僕に手を差し出した。驚いた僕は少し戸惑った後に、「うん!」と言って彼の手を掴んだ。


この時僕は、彼女のことを何も考えていなかった。

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