第8話

夏休みが残り一週間を切った後、僕は学校の宿題を全部終わらせて、友達とよく一緒に遊んでいた。声をかけて来た男の子は僕と同じ小学六年生だった。彼は、僕よりも背が高くて、肌が綺麗な小麦色に焼けていた。リーダー気質な性格からなのか、他の男の子たちが彼の周りに寄って来ていた。


誘われた日から僕は全くモモカの所へ行っていなかった。正直、女の子と遊ぶよりも男の子と遊ぶ方が楽しかった。でも、彼女に対して何も言わずに行かなくなるのは悪い気がしたので、その日は彼らの誘いを断り、彼女が待つ社へと向かった。


向かう途中、久しぶりに見る景色を見ながら歩いた。いつもと同じ、変わらない道を歩いているはずのなのに、全く違う雰囲気を感じた。何か、嫌な予感がした。僕は急ぎ足で彼女が待つ、小さな丘へと向った。



「え…うそ…?」

僕が目的としていた場所に着いた時には、何もなかった。

綺麗に咲いていた桜もなく、そこにはただ広い野原しかなかった。僕が見ていた物は本物だったのだろうか。そんなことも思った。

それよりも、彼女に謝るために探した。

必死に探した。

走り回って、彼女を探した。なりふり構っていられなかった。


謝らなきゃ。僕が、僕が悪かったんだ。


ごめんね。約束破って。本当にごめん。


寂しかった僕に、声をかけてくれたのは彼女で。


岐阜での思い出を初めてくれたのが彼女で。


その、大事な彼女を、僕は、無視したんだ。


お願いだから、もう一回。


僕と、遊んでくれないかな…?


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る