第零話



 その少年は、まるで死人だった。


 世界を創る事に疲れた少女は、久々に見た現世でそれを見た。


 公園のベンチに座り、月を見上げる姿。

 虚ろな目で街を歩き、人々を眇める姿。


 その少年が、どうしてか。


 見るごとに、かつて救いたかった、思い出せない『誰か』に重なった。


 ――ああ、と少女は思い出す。

 ――そうだ、自分は沢山の人ではなく、ただ一人を救いたかったんだ、と。



 そして、


 神様は、少年の元に歩む。


「――私は咲耶姫という」



「ねえ、少年。異世界転生に興味はない?」


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異世界の夢 午前 @antemeridiem

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