5章 隣の家族は青く見える

第1節 さすがに21時には帰る

 日曜日を挟んで月曜日の朝。龍崎は一人テーブルに向かい、朝食を摂っていた。向かいの席に、葵の姿はない。食器のカチャカチャという音がだけが、部屋に響く。


 さきほど携帯電話のアラームにたたき起こされた龍崎が階段を下りてリビングに入ると、そこに葵の姿はなかった。キッチンスペースにあるテーブルの上には、朝食と、そして一枚のメモ書き置かれていた。メモには、


「用事があるから早めに出ます。ご飯はチンして食べてください。お皿は水につけといてください。それから、叔父さんにはこの前のこと黙っておいて。私が話すから。

 あと、遅くなるのは仕方ないけど早めに帰ってきてください。警察に厄介にでもなったら叔父さんに迷惑かかるし」


 と、丸文字で書かれていた。

 龍崎はそんなメモ書きをテーブルの脇に置き、朝食を食べる。味の感想は出て来ない。食事を続けるが、一向に進まず、大半を残す形で食器を片付けることにした。シンクに食器を運び、水に浸してから、鞄を持って玄関に向かう。

 と、家の鍵を閉めたところで龍崎は携帯電話を取り出し、

「さすがに21時には帰る」

 とだけメッセージを打ち込み葵に送信した。そして彼は重い足取りで学校へと向かう。今日は叔父の家に行かなくてはならない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る