未来の義弟(予定)のお部屋訪問です


 あの後、どうにかしてシリルに会い、放課後にシリルのお部屋へ訪問するアポを取り付けた。


 理由は変に誤魔化さず、セシルにパーティーの1件を話した理由を知りたいと言うもの。シリルはシリルでセシルから机の落書きの件を聞いていたらしく、詳しく聞きたいから遠慮なくおいで。と言われた。

 詳しく、と言われても朝来たら落書きされていて何も分からないんだけど……


 と言うわけで、私は今、シリルの部屋の前である。


 1-5C。


 そう書かれたプレートと、手元の紙を交互に見る。

 合ってる……うん。これはシリルから直接渡された部屋番号なのだ。間違っているはずがない。


「……よし、」


 アポを取ったわは良いけど、未来の義弟のお部屋なんて緊張するに決まってる。ドアの前で深呼吸して、いざドアをノックしようと手をかざすと


 ガチャ。


 ノックしようとしたドアが内側から開いた。


「ああ、ちょうど良かったです。クロエ嬢」


「シリル様。今日は突然申し訳ありません」


「いえ。大したお構いは出来ませんがどうぞ」


 内開きのドアを体で押さえながら招き入れる形をとったシリルに、私は小さく頭を下げ足を進めた。


 学園寮の部屋は基本的にみな同じような作りと広さである。

 1人1部屋。8畳ほどの広さの部屋には備え付けの机とベッド、クローゼットがあり、窓は大きい南向きのが1つ。

 隣には小さいがキッチンもあるし、もちろんトイレもお風呂もある。貴族ってすごい。

 1代貴族の男爵のみ、1人部屋か2人部屋かを選べるようになっているが、基本1人1部屋。


 王都にメインの屋敷がある人たちは自分の屋敷から通っているが、生徒の8割は寮住まいなので、部屋数も膨大である。


 さて、シリルの部屋。天井と壁は白に塗り替えられており、窓には淡いグリーンのカーテンが掛かっている。

 ベッドカバーもグリーンで統一されている。

 机の隣には本棚が2つ並んで置いてあり、棚の中には目一杯本が入っていた。

 部屋の真ん中に置かれたテーブルはこぢんまりとした物だが、1本脚に施された彫刻が見事である。


「紅茶しか無いのですが、大丈夫ですか?」


「はい。ああ、こちらに伺う前にケーキとクッキーを買って来まして。お口に合うか分かりませんがお召し上がり下さい」


 勧められた椅子に腰かける前に手土産として買ってきたケーキとクッキーを渡すと、シリルの瞳がわずかに大きくなった。


 「有難うございます。甘いもの好きなのでとても嬉しいです。せっかくなので紅茶と一緒に頂きましょうか。少し待っていて下さい」


 お宅訪問で手土産は必須。

 そしてシリルが甘いものが好きなのはゲーム知識で知っていた。


 印象は悪くないはず!

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