悪役令嬢っぽい子がいました
次の日、教室に入るとクラスメイトが私の机の回りに集まっていた。
それまで全く、清々しいほどに忘れていた創立記念パーティーでの事が頭に過る。いやもう全力で嫌な予感しかしない……
「おはようございます。皆さん、私の机の回りに集まって、何かありましたか?」
輪の後ろから声を掛けると、みんなが皆、一様に肩を大きく揺らす。
私はため息を呑み込みながら輪の中央、自身の机まで近づくと
(これはまた、小学生か)
目の前に広がっていたのは落書きされた机。長机なのだが、ジャレットのスペースとエリーナのスペースは綺麗なまま。見事に私のスペースのみが落書きされていた。
「お嬢様ー。昨日借りた本、図書室に忘れ………どうしたの?」
「セシル様……。えっと、おはようございます?」
とりあえずモーガン先生に伝えるとして、あとは……この落書き何を使えば落ちるのかなあ。と頬に手を当て考えていると、昨日借りたテーブルマナーの本を片手にセシルが教室に入って来た。
ああ、図書室に忘れてたのか。借りたのに紛失したのかと焦った。
「おはようお嬢様。で、なにこれ? ここお嬢様の席?」
「あー、えっと、はい。そう、ですね」
私の肩に後ろから手を置き机を覗き込むセシルの声が低い。
軟派設定故なのか、男性にしては高めの軽い印象の声が、今は2オクターブくらい低い。
「シリルから聞いたけど、パーティーと同一人物っぽいねえ」
机の落書きを一撫でして、セシルは私に小さく耳打ちした。
セシルがパーティーの件を知ってたこと、それをシリルから聞いたことに驚いてセシルを見ると、「うちの家、得意なんだこう言うの。だから任せて」と笑った。
得意ってなんだろう。怖い…………
いや、そう言えばゲームでもセシルルートは影で色々やらかそうとしていた恋敵ライバルの所業を探り当ててたなあ。
「……とりあえず、担任にちゃんと報告しなね。お嬢様」
「あ、はい」
任せて良いのだろうか。
と言うか、個人的にはエリーナが怪しさ満点なんだけど、単独行動したら駄目かな。
平凡設定だから何の力も無いんだけど……
は! シリルに聞こう!
折角部屋番号を教えて貰ったんだもん。使わなければ勿体ない!
よし、そうと決まればシリルを探さなきゃ!!
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