もうすぐ創立記念パーティーがあります
さて、シーズン休みが明けたばかりのこの時期には、創立記念パーティーがある。
この創立記念パーティー。
そこでは満を持して攻略対象で1番難易度の高く、攻略対象で1番人気キャラクターであるリュージエル王国第三王子、ブラッドフォード・ワイズが登場する。
金髪碧眼で眉目秀麗。爽やかな笑顔と物腰の柔らかな口調。
背景はいつもキラキラと輝いていた。画面上では。
そして第三位とはいえ、王子。頭の回転も早く、キレる。勉強が出来る、だけではなく、地頭が良い。
なので、とにかくモテる。すごくモテる。
そしてモテるが故に恋愛に冷めている。
そんなブラッドとクロエは創立記念パーティーで初邂逅する。
王妃の趣向で仮面舞踏会と言う特殊な舞踏会である記念パーティーは、仮面舞踏会という事で身分を明かすことはご法度。聞くことも話すことも許されない。そしてエスコートもなし。
そんな特殊な空気に慣れないクロエは、飲み物を持って中庭の長椅子に腰を掛け休んでいた。
そこに現れたのが仮面をつけたブラッド。
『貴方は?』と聞くクロエに『ここでは名乗らないのが礼儀ですよレディ』と答えるブラッド。
彼もまた仮面舞踏会に疲れ中庭に休みに来たのだ。
クロエの座る隣に腰掛けるブラッドと少しばかり会話をし、折角なのでと1度だけ一緒に踊る。
その後、とある切っ掛けで改めて出逢い、そこから攻略して行く……のだが、この「とある切っ掛け」を作るのが難しく、中々ルートに入ることが出来ないのがブラッドの攻略の難易度を上げていた。
* * *
社交シーズンでのマウント取りが終わった学園内では、記念パーティーの話題で持ちきりである。
エリーナもオリヴィアと何人かの令嬢とその話をしているのがチラチラと聞こえる。
仮面舞踏会は学園の生徒・先生、そして王族がもれなく全員参加行事で、当たり前だがモーガン先生も参加する。仮面をしているので中々見付けるのが大変だが、頑張って欲しいと思う。
私は最推しは居ないから未来の義弟との好感度を上げよう。うん。
「クロエ嬢は仮面舞踏会は初めてですか?」
「え?」
自分の席で読んでもいない本を広げながら考えに耽っていると、隣から静かにジャレットが話しかけてきた。
「え、ええ。仮面舞踏会もエスコートも無いというのは初めてです」
「そうなんですね。僕も仮面舞踏会は数えるほどしか参加した事が無いんですが、お顔が分からないのも中々楽しかったですよ。……ああ、ねえ、クロエ様」
ジャレットがただでさえ小さかった声をもう一段落とす。
「僕は銀地に緑色の模様の入った仮面をしています。探してください」
「え?」
「一緒に踊りましょう?」
ね。と優しく微笑むと、ジャレットは私の手の甲に小さくキスをした。
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