第4話お姉ちゃんと呼んで欲しい

どのくらい眠っていただろうか……。

西日の眩しさに起こされた。

思ったよりぐっすり寝てしまったようだ、こんなに寝たら夜寝れなくなる。

もうそろそろ家に戻ろう。


伊集院家の料理長が夕食の支度をしているのか美味しそうな匂いが漂ってくる。

「……ん?」

立ち上がろうとして膝が重い事に気がついた。視線を膝に落とすと可愛いにゃんこが………もとい、私の膝に頭を乗せてすやすやと眠るクソカワイイ弟がいた。


奇声を発しないように片手で力一杯自分の口を塞ぐ。


なにこれ、なにこれ、可愛い過ぎんだろおおおぉ!!!

あれだけ逃げ回ってたくせに、なんで膝枕!?急にゼロ距離とか心臓が!

ハッ! そうか、猫は…


ツ ン デ レ だ!!


追いかけると嫌がるくせに、こっちが引くとすり寄ってくるとか……猫好きを手玉にとる方法を分かっていらっしゃる!

ソラ……末恐ろしいな!!


内心ギャーギャー悲鳴を上げながらそれを外に出さないように耐え抜いた私はじっくりと、眠るソラを観察する。

猫耳は眠りながら音を拾っているのか時々ピクピクと動いていた。その猫耳にそっと手を伸ばして刺激しないように撫でてみる。


極上のもふもふが、そこにはあった。

触れた途端しっとりしていると錯覚するくらい吸い付いてくる艶のある毛。


こ、これは……もふ5つ星!!


私の中のもふもふランク、その中でも最高のもふもふ度だ。

私が最高もふもふを堪能していると寝ていたはずのソラがぱちっと目を開けた。

起こしてしまったと慌てて手を離す。


「…満足した?」

膝枕をしたままソラが私を見上げる。

「起きてたの…?」

私が驚いて尋ねるとまぁね、と返事が返ってくる。



お前、狸寝入りしてたのか!

猫なのに!



「…別に、嫌いじゃない」

私が内心で突っ込みを入れると同時に、ソラがポツリと呟く。


え?ツッコミ入れられるのが嫌じゃないって?


「………あんたの事、嫌いじゃない…今は」


あ、そっちか。デスヨネー。


「…前は嫌いだった?」

「そりゃ、急に家族になるから好きになれって言う方が難しい」

「それもそうか」


可愛い、ツンデレソラたん!

もふ、もふも、ふもふもふもっ!もっふー!

もふふ、もっふ、もふふふんふーん、もっふもっふふ、もっふっふ!

………おっと人語がログアウトしかけたぜ、危ない危ない。



冷静な顔をして話しているが、心の中はデレッデレである。


「……仕方ないから家族になってやるよ」

「本当?ならお姉ちゃんって呼んで欲しいわ!」

「絶対嫌」

「えー…」


おおぉう、道は険しいな…。

でもいっか、かわゆすなソラたんが見れたんだから!

慣れてきたらそのうち、お姉ちゃんと呼んでもらおう。


ソラと出会って3週間、私はやっとソラの家族になることができた。






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