第一章 蠢く影と闇
11話
―――その男はつまらなさそうに遠くを見やって言葉をこぼした。
「…………なんと味気ないことか」
と。手に持つワインのグラスを手慰めのように揺らし、もう何度目かのため息をつきながら。
その耳に聞こえるのは燃え盛る炎の音とかすかに聞こえる剣戟、そして―――たくさんの悲鳴。
男たちの野太い、女たちのかな切りのような、子どもたちの甲高い、そんな叫び声。
それと同じくして聞こえるのは―――人を襲うことに躊躇いのないモンスターたちの歓喜に満ち溢れた唸り声だ。気を昂らせているのか本能のままに動いているのか、手当たり次第に凶刃と凶爪を振るっているようである。
突然の襲来・惨事に人々は逃げ惑い、それを心底愉しそうに、あざ笑うかのようにモンスターたちが所構わず壊して猛威を振るう。建物はほとんどが倒壊か火の海に包まれながら辺り一面を煌々と明るく照らし、その光が無惨にも人々の恐怖や嘆きの表情映す様はまさにこの世の地獄にも等しいくらいだ。
そのような情景だというのに、この男は何もせずただワインを飲んでこれを見ている。まるでこの災厄自体を実験しているかのように。
・・・そう。
城の眼前にある街は―――グラスウォール王国の中心である王都はいま、まさに大規模な侵略を受けている真っ只中であった。
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