口づけに春は来なかった

露島真衣。
彼女と出逢ったのは、十五の春だった。
人を蔑み、貶めることでしか生きられない僕らは、ある日『恋愛ごっこ』と称して肌を重ねた。何度もなんども抱き合った。もう互いの知らぬところはないと断言できるほどに。

けれどごっこ遊びなど、いずれ終わる日が来る。
時の流れに伴い、僕らはいつしかそれぞれの道を歩み始めた。
公園の遊具が減っていくように、相手のことを思い出す回数も減っていった。

もう二度と会うことはないだろう。
あるいは、そんな事も考えなくなっていた。
離ればなれになってから七年経った、春のことだった。

見つけてしまったのだ、僕らは。
あの頃と変わらぬ、互いの涸れた瞳を。