第27話 けっこんしき

結人が仕事行っている間、かばんは

こんな相談を持ちかけた。


「ねぇ、ハカセさん。結婚式をやりませんか?」


「結婚式?」


「ケーキとか作って...、フレンズさん達と...」


「やりますね。やりますやります」


「だと思ってました!

僕がプランを考えておきますよ」



まずは必要な物を考えなければいけない。


必要な物はケーキの材料...

それはラッキーさんに頼む。

調理担当はヒグマさん達と僕とサーバルちゃんで。


次に衣装が必要になる。

僕の思い描いているのは、白いウェディングドレス...!

これが作れそうなフレンズさん...


そして、装飾と招待状を配れば...!


《へいげん》


「おー、かばんじゃないか!勝負しに来たのか?」


「いや、違うんです。用があるのはヘラジカさんじゃなくて...、ヤマアラシさんなんですが...」


「わ、わたし...?」


《ロッジ》


「アリツさん、どうも!」


「ああ、お久しぶりですね」


微笑んで会釈した。


「あの、ひとつ頼みたい事が...

後、タイリクオオカミさんにも...」


《みずべちほー》


「センスの良いマーゲイさんにお願いしたいんですよ!」


「なるほど...!これはプロデューサーとしての腕がなりますね!」


《さばんなちほー》


「...そういう事なら、喜んで協力するわ」


「ありがとうございます!」


こうしてきょうしゅうちほーの

フレンズが総力を上げて、結婚式の準備に取り掛かるのだった。


ーーーーーーーーーー


「フェネックさん、アライさん。

今から重要な事を頼んでもいいですか?」


「アライさんにお任せなのだ!」


「何かな」


僕は本を開き、挿絵を見せた。


「この花を取ってきてもらいたいんです。このちほーに咲いていると思うので...」


本をフェネックに渡す。

彼女はある程度文字も読める。


「その花を取りに行くのだ!

急ぐのだフェネック!!」


「もー、ゆっくり行こうよー」


よし、あの二人ならなんとかなる。

はずだ。


僕は僕で仕事をしなければ。

この計画の発起人として全ての現場の指示をしなければならない。


「みなさん、お待たせしました!

ケーキを作りましょう。博士さんが喜ぶような甘い甘いケーキを!

ヒグマさんは僕と、キンシコウさんとリカオンさんはクリー厶で、サーバルちゃんはフルーツを用意して!」


「いきなり始まるんですね...」


「オーダーキツくないですか?」


不安気な顔を二人は浮かべた。


「結人さんが帰ってくる夜までに仕上げないと...」


「私は頑張るよ!かばんちゃん!」


サーバルは意気込んでいた。


「やれやれ...、早くやろう...」



一方、



「どうだい、この招待状のデザインは」


「うーん...、ちょっと怖くないですか?」


「そうね...」


タイリクオオカミの書いた招待状のデザインに否定的なのは、

招待状係になった、アミメキリンとトキだった。


「クセが出過ぎてますよ。

もうちょっと可愛くかけるはずです。

先生なら!」


「...それじゃあ自分で描いてみろって話でしょ」


ペンと紙をキリンに差し出した。


「わ、私がですか?」


「君だって私の傍にいて、何も学んでいないわけないだろ。他力本願じゃなくて、自分で描いてみたらどうだい?」


「わかりました...

やってみせますよ!トキさん!一緒にやりましょう!」


「あっ...、ええ...」

(アナタが1人で描くんじゃないのね...)



時同じくして...



「こっちの方が似合うのでは?」


「何言ってるんですか!やはりこちらの方が...!」


「アリツ、マーゲイ、言い争いは時間の無駄よ。このデザインとデザインを掛け合わせたデザインにすればいいでしょ?」


「ああ!なるほどです!」


ーーーーーーーーーー


22時頃


「ふぅ...、

ちょっと遅くなっちゃったな...」


俺は仕事が終わり、例の古井戸から中に

入った。


ジャパリパークに辿り着くと...


「ん?」


なんか図書館が明るい...。

俺が井戸から出た所で不思議そうに

突っ立ってると。


「お仕事、お疲れ様です」


「かばんちゃん?」


心做しか嬉しそうだ。


「ちょっと、来て貰えますか?」


「...?」

(なんだろう...)






導かれた先には...


「マーゲイさん!?」


「この服に着替えてください!」


黒服を渡された。


「こ、これって...」






「可愛いじゃないですか!博士さん!」


かばんはそう賞賛した。


「...て、照れるのですよっ...、

そんな...」


「さ、博士!旦那さんが待ってるよ!」


サーバルはジェスチャーで合図をした。





俺にとっては突拍子もないサプライズだ。まさか1日でここまで準備すると言うのにも驚きだし、博士のドレス姿が見られるとは...


「博士...」


「ユイト...」


「さ!中に入ってください!」



図書館の中へと続く、赤い絨毯。

こんなものまで...。

かばんに背中を押されるがまま進んだ。


「かばん、さっさとケーキをよこすのです」


小声で呟く。


「はいはい...」

(予定を入れ替えましょうか...)


中に入ると、大勢のフレンズに囲まれる。とても、緊張する。

綺麗な白い花も。

手作りの壇上に用意された椅子に座った。


「えーっと、これより、結人さんと博士さんの結婚式を始めます」


かばんが挨拶をするとライブ会場の様に拍手が湧き上がった。


「助手さんからお祝いの言葉を」


マイクを助手に渡した。


「...博士、島の長の右腕として、

今回の結婚を祝福します。

博士の幸せは私の幸せ...。私も胸の内で色々思う事はありました。けど、博士のためを思ったら」


「ケーキはまだですか?」


「博士っ!?まだ喋ってる途中でしょーが!」


俺も思わず突っ込んだ。

最近彼女は自由人になってきて、ホントに困る。


「あー...、わかりましたよ。

後2分ぐらい話そうと思ってましたが...

これからもよろしくお願いしますという事で」


助手はマイクを置いた。


「で、ではもう...、メインイベントまでやっちゃいますね。お二人はこちらへ」


場所を移して階段の上、素早くかばんは移動した。彼女一人で司会から神父役まで...、この中で一番気合が入ってるのは彼女だと思った。


紙を出し、読み上げた。


「川宮結人は、この水俣木葉を妻とし、良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」


「ああ、はい」


「水俣木葉は、この川宮結人を夫とし、

良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」


「はいはい」


(せっかく僕が寝る間も惜しんで用意したのに...二人とも適当すぎる...)


笑顔の裏ではそういう風に思っていた。


「で、ケーキですか?」


「もうキスとかはいいです...

ヒグマさん、さっさと出してください...」


かばんはため息混じりで言った。


「かばん...、実は...、外にあるんだけど...」


「なんですか?」


俺達も外に出て確認すると...


「...!?ケーキが食われてる!?」


かばんは驚いた声を上げた。

3段重ねにしたはずのケーキの下段が

食われている。


「あの...実は、サーバルが...」


「なんでよ!酷いよヒグマ!

あなただって味見って言って食べたくせに!だよね、キンシコウ」


「ヒグマさんは、食べてないし私も食べてませんよ…。それ本当ですから...」


「キンシコウ先輩の言う通り、私と先輩達は食べてません。味見とか言ってスポンジちぎって食べてたのはサーバルさんの方ですよ。責任転嫁はやめてください」


「だって私がこんなに食べる訳ないじゃん!」


「サーバルちゃん...、

口にクリー厶が....」


「うみゃ...」




俺が気付くと博士はとてつもないオーラを放っていた。スタンドでも出しそうな雰囲気だ。


「まずい...」


「サーバル...!!

食べ物の恨みっ!!!!!」


急に野生解放してサーバルを襲う博士


「うみゃー!許してよ!!」


「許さないのですっ!!お前を骨の髄までむしゃぶり尽くしてやるのです!!」


そのままサーバルは逃げていった。


「これが本当の鬼嫁ってか...」


俺は困惑してサーバルをドレスを着たまま追い掛ける博士を見つめた。


「あーあ、もう滅茶苦茶ですよ...

ごめんなさい、結人さん。僕からもサーバルちゃんにお仕置きしておきますから」


「あ、いや...、用意してくれてありがとう...」


でも大半は博士のわがままのせいで

ハチャメチャになった結婚式もどきだった。


「あのPPPのライブは...?」


「プリンセスさん...、ケーキでも食べて帰っていいですよ」


冷たい眼差しを送られた。

その後色んなフレンズによりケーキは美味しく頂かれた。






「アライさーん。アライさんはぁ、

死を二人が分かつまで、私と一緒にいるって誓ってくれる?」


「もちろんなのだ!」


「じゃあ...、誓いのキスをしてもいいかな...」


フェネックは顔をアライさんに近づけた。


「ふぇ...フェーックション!!

あ...、フェネックごめんなのだ...

花を取りに行ってから...、鼻がムズムズするのだ...」


「・・・・」

(アライさんの...、体液が...

あははっ.....)




「あ...、折角ブーケ作ってくったの渡しそびれちゃった」


かばんはアライさん達がみつけてきた

花のブーケを取る。

そしてふと思い図書館の階段の中段へ登った。


「確か、こうして後ろ向きに投げるんでしたよね...」


放物線を描いたブーケは...




「アワワワワ...」

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