第26話 かばんちゃんの結婚事情

「ねえ、ケイくん。僕、パークに戻らないといけないんだ」


サーバルと助手を車から下ろしたあと、

かばんは室見にそう打ち明けた。


「だよね...。

あのさ、5年だけ待ってくれないかな」


「5年...?」


「そう。今日から、5年後

また、この場所で君と会いたい」


「え...」


オイナリサマとキュウビに頼めば、

こっちの世界に来ることくらい出来る。

不可能なことではない。


「頼む。約束...、してくれないか?」


「わかった...」


かばんはその要求を飲み込んだ。

自分自身、室見を好きなのもあるし、

約束を断ることなんて、出来なかった。


「じゃあ、5年後な」


「...うん」


彼と約束をした。





時が経ち、5年後。

あのオイナリサマとキュウビの力を借りて、アパートへやって来た。

扉を開けた先には、


「待ってたよ」


髪色が茶色になっていたが間違いなく、

彼だ。


「ケイくん...」


彼は懐から小さな箱を取り出した。


「結婚してくれ...」


「ええっ!?」


驚いて、言葉が出なかった。






黒いスーツを着た人達が古そうな門の前に整列する。異様な光景だった。

室見にエスコートされ、かばんは車を降りた。


門をくぐると、美しい日本庭園が広がっていた。

石畳の通路をゆっくりと歩く。


「ここ、なんですか...?」


「実は...、僕の血筋に組の人がいてね」


「く、くみ?」


「同じ志の集いさ。前の組長は、色々面倒な事してたみたいで。親戚の僕が跡を継いで、組長になったんだ。

弱い人を潰すんじゃなくて、

これからは、悪いやつを潰すんだ」


室見の言っていることがよくわからなかった。


「そ、そうなんだ...」



そして、大きな屋敷が現れた。

そこに上がれと催促され、上がった。

緊張したまま、奥の部屋へ連れてかれた。


その中の部屋にも、黒服の厳つそうな人が何人もいた。


「みんな、紹介する。

僕の妻になる、アヤだ」


こんな集団の前で自己紹介するのは

初めてだ。


「あ、あの...、よろしく...お、お願いします...」


もじもじしながら、挨拶をした。


「言っただろうけど僕は、前組長とは違う。法で裁けない者達に制裁を下す。言わば、正義のヒーローだ。

常に普通と言う名の仮面を被るように一人一人、意識してくれ」


「「はいっ!!」」


ピッタリと息の合った返事だった。


「3日後に結婚式を挙げる。

準備をしておいてくれ」


「「はいっ!!」」


「あの...ホントに...」


「大丈夫。彼らは信頼できるから」


その後、室見の妻となったかばんは組長としての役目を務める室見をサポートした。サーバルを養子にし、平和な生活を送るのだった。



「えっ?ケーサツ?家宅捜索?

な、なんでぇ!?」



めでたしめでたし...?

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