第28話 ふうふせいかつ

ピンポーン



「あっ!!じょしゅさん!」


「じょしゅー!!」


二人の子供が助手に抱きつく。

一人は黒い短髪の男の子

もう一人は薄い黄色い髪をした長髪の

女の子だ。その顔立ちは二人とも似ている。


この子達は博士の双子の子供。

崇大そうだい有咲ありさだ。


「お土産はー?」


「お金ちょーだい!!」


「はいはい...後でやりますから...

靴を脱がせるのです...」


タジタジになっているところに...


「あぁ助手...、助かるのです。

洗濯と掃除、後二人の面倒を...

あ、お土産はありますか?」


「ハァー...、さすが博士の子供ですね。性格までそっくりなのです」


「ん?何か言いました?」


「なんでもないです...」


助手は口を噤んだ。




紅茶を注いだティーカップをテーブルに置いた。


「しかし、本当に博士がパークとこっちを行き来する生活をするとは、今でも信じられませんよ」


「ユイトの為ですよ。こっちに住まいを構えた方が彼も楽なので」


お互いに紅茶を飲んだ。

現実世界で飲んでも、美味しい。


「もう4歳ですか...」


「ええ。早いものです」


「ヒトの大変な子育てを4年間も行うとは、私も関心しますよ。

私にはあんな苦行耐えられる自信がないですね」


「まあ...、私も人の身体を舐めてかかってましたからね。ユイトや助手には迷惑をかけたのです」


パークと現実世界を行き来していた結人だったが、博士が結人と子供を作る事を決心し、現実改変をオイナリサマとキュウビにお願いしたのだった。


人間体となった博士はその年、双子を

授かることになる。

彼女自身、甘く見積っていたが、現実は

岩肌剥き出しの山を登るような険しいものだった。




「おい、博士...、大丈夫か?」


「身体中が...痛いのです...ハァ...

こんなんなら...、卵で産んだ方が、まだマシですよ...」


「おいおい...」

(だけど、言い出しっぺは博士なんだけどなぁ...)


「あぁ...、死にそう...」


確かに身篭ると辛いとかよく聞くけど、

フレンズの体を無理矢理人間体にさせてるから、その負担はまた違うのだろう。

結人はそう思いつつ、経過を見守った。


そして...


「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ッ!!」


真夜中の出来事だった。


「博士!?」





「いやー...、今になって思えば、

あの苦痛は二度と味わいたくないのです。しかも、それが通常よりも二倍...」


「あぁ...」


助手は頷いて見せた。


「不安はありましたけど...、

元気に育ってくれて、良かったです」



「おかーさん!遊ぼー!」


「ねぇーねぇー!!」


「ソウダイ、アリサ、ミミおばさんに

遊んでもらいなさい」


「おば...ってえっ?何を根拠に!」


「ヒトの習わしです。別に老けてるって言ってないからいいじゃないですか」


「....、二人とも、向こうに行きましょう。今からお母さんの恥ずかしい話をしてあげますからね」


助手はそう言い立ち上がった。

崇大と有咲を手招きで、奥の部屋へ招いた。


「何ですか恥ずかしい話って。

子供に変なこと教えないでほしいのです」


「大した事じゃないですよ。

ただ、博士はカレーの甘口か辛口か、

どちらの辛さがいいかで私と喧嘩して図書館を飛び出したって話ですよ

それで人間の男の子と出会ってって」


「ちょっ...!なれそめの話はまだ早いのですよ!!」


「なれそめ?そんな事一言も言ってませんよ。私は今でも博士が甘口のカレーしか食べれなくまだ子供だねという話を」


「じょ、助手っ!!島の長として許さないのです!!」


顔を真っ赤にして、助手に言い返した。


「じょしゅさん、おかーさんはこどもなの?」


「まだこども?」


二人は息を揃えて助手に尋ねた。


「そうですね、まだ子供です」


「は、恥ずかしいじゃないですか!!」


ムキになって言うと、助手はクスッと笑い、


「子供のハカセさん、私と一緒に遊びますか?」


「ええっ...」


「おかーさんもじょじゅさんとあそぶの?」


「いっしょにあそぶの?」


「私は面倒な子が増えても、

構いませんよ?」


子供の手前、悩んでしまった。

けどまぁ...。たまには。


「助手の朗読でも聞きますか...」















「先輩、それ奥さんですか?」


休憩中デスクでスマホを見ていると、後ろから声を掛けられた。


「ああ 、まあね」


「何かのアニメに出てきそうですね」


笑い声混じりにそう言った。


「良く言われるよ」


「羨ましいなぁ...。

こんな可愛らしい奥さんに、

双子の子供、どっちも絵に書いたような

美男美女ですし。

俺も出会いないかな~」


俺はそんな後輩に向かって、こんなアドバイスをした。


「意外と幸運って近くに落ちてるもんだよ。

“雨の日の公園に行ってみる”...

とかね」




長と少年 END




















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