第11話 なかたがい

私は京ヶ瀬真希

密かに川宮結人に想いを寄せる中学1年生...


だけど、私の想い人は僅か2ヶ月である奴と付き合い始めた...!


木葉から結人を引き離すいい手立ては無いか探っていたら、これまた木葉の姉と名乗る尾鷲優美と出会った!

これはラッキーだった。

...けど、何も進展が無いまま、夏休みを迎えてしまった。


「ねえ優美さん...!どうしたらいいの?」


「まずは落ち着いてください」


無愛想に言って、麦茶を飲む。


「....」


焦る気持ちを抑え、面を突き合わせる。


「こうなったら、あの手を使うしかありません。川宮結人の住所をご存じですか」


「うん...」


彼の父が議員さんってことは知ってる。

親に頼んで住所を調べてもらった。


私は、メモ帳にその住所を書き綴った。


「そこに行って私がはか...木葉を説得します。真希は、結人をおびき寄せてください」


「結人君をおびき寄せる...!?」

(それってつまり私と結人が二人っきりってことだよね...)


「デートなんて恥ずかしいよぉ!!!」


赤らめた顔をクッションに埋めた。


「デートしろとは言ってないのですが...。とにかく、協力して頂けますね?」


「もちろん!」


「決行は明日以降です」


「じゃあ善は急げね」


スマホを取り出し、結人のラインにメッセージを送った。


(結人の事になると行動が早いのです...)


3日後にアポイントが取れた。


“行動は端的に。かつ、効率的に”

助手はそうアドバイスした。


ユイトのマンションに行き、真希が結人を誘い出し出てきた後、助手は結人の部屋へと向かった。


エレベーターの中で、

(いとも簡単に博士と接触できるとは。

真希と組んで正解だったのです。

感謝するですよ、キュウビ)


エレベーターを降り、結人の部屋のインターホンを押した。


ピンポーン...


音が響いてからの沈黙。

助手は至って冷静でいた。


ドアを開けた人物にこう、口を開いた。


「お久しぶりです。博士。髪が伸びましたね」


彼女は驚いたのか、目を見開いた。


「お、お久しぶりって...ま、まさか助手のですか!?」


「そうですよ。あるフレンズに頼んでやってきました」


「いっ、一体何をしに...」


「博士をパークへ連れ戻しにやってきたのです。長がいなければパークは纏まりません」


身長の関係で助手は見下ろすように答えた。


「パークのみんなが心配してます。

帰りましょう」


「で、でも...」


「人間の男と仲良くなったみたいですね」


「...!」


心臓を槍でつつかれたようにドキッとした。


「フレンズの時は長らしく意地を張って色々かばんとかに命令してたのに、人間の地の色に染まって、しかもオスを求める様になったとは...。変わってしまいましたね」


「助手は何が言いたいのですか」


「私が博士を元に戻すと言っているのですよ。前みたく、私と一緒に飯を食べ、私と一緒に寝る...」


「...帰ってください」


「はい?」


突然の言葉に耳を疑った。


「助手がそこまで私に独占欲があるなんて知りませんでした。私は私の幸せを追求するのです」


「何を言うんですか...」


「...あなたの態度が気に入らないのです!長の私に対して、元に戻すとか上から目線過ぎるのです!」


「そ、それは...」


「...それに私は、ユイトともう少し一緒に居たいのです。パークにいつ戻るかどうかは...、時間をください」


「では、戻らないのですか?」


「先程も言った通りです...。

後、助手、私の気持ちもちゃんと考えてください。助手は私のことをわかってくれてると思ったのに...」


玄関先でバンと閉められてしまった。

鋼鉄の扉を前に、助手は立ち尽くした。


(...あの図書館を飛び出した日も同じことを言ってましたね...)


脳裏にあの日のことが蘇った。


『助手は私の気持ちがわからないのですか!』


(私は、博士の傍らに居たのに、博士の気持ちをわかっていなかったんですね...)


重いため息を吐いた。


「じゃあ、博士の気持ちを尊重します。でも、いつかはパークに帰る時が来ることを、忘れないでください」


私は意地悪をしてる訳じゃない。

ただ彼女に現実を教えてるだけだ。


廊下を歩き、玄関の前から去って行った。




一方、真希の方は...


「おいなんだよ…用事って...」


「いやっ...えっと...あのね...」


(なにやってんの私っ!結人と会えたんだから何か...、この機会に...

でも何を言えば...。一緒にデート?

いやいや、ハードル高すぎだよ...)


「おい、真希。顔が赤いよ?熱でもあるんじゃない?」


「...!!」


(私を呼び捨てで呼んでくれたっ...!)



(俺は一体何のために呼び出されたんだ...?)


「あの、もう帰っていい?」


「あっ、えっ...、あー...

違う!宿題でわからないところがあって!」


咄嗟にそんなことを呟いた。


「じゃあラインで送っといて。またね」


結人はそう呟いて帰った。


(なんて幸せ...!真希だって!呼び捨てだよっ...!)









「ただいま、博士」


俺が帰って来ると博士は少し思い悩んだような顔をしていた。


「どうした?」


「...信じられないかもしれませんが、

助手が来たのです」


「え?助手?あの助手?」


コクリと肯いた。


「マジで?」


流星以外でこの世界へ来る方法があるなんて、正直驚いた。


「でも実際助手と会ったら...」


彼女は口を噤んだ。

何か言いにくい事でもあるのだろうか。


俺は彼女が思い悩む姿は初めて見た。


(そっとしておこうかな…)


「ああ、俺部屋にいるから」


そう言って、その場を離れた。



夜、

真希は結人に名前を呼ばれた事が余程嬉しかったのか。幸せそうな顔をしながら、ベッドで寝てしまった。


そして助手は、ベランダから星を眺めていた。


唐突に彼女の名を呼んだ。


「キュウビ!」


少し間が空いた。


「なに?」


「“あいつら”の居場所を教えてください」


そう、リクエストした。

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