第7話 攻めあぐねるカナ

魔人が拳をハンマーのように振り上げ、カナに向かって振り下ろす。

カナはそれを後ろに飛び退いて避ける。


カナと魔人との距離が少し開いたその瞬間に「パン」という乾いた爆発音が響いた。

ダンが魔人の眼前に水素を集結させ、爆発させたのだ。

小さな爆発だったが、魔人は驚いて後退する。


その隙にダンはカナに駆け寄り、回復魔法をかけた。

カナの動きを見ているうちに、ようやくカナの負傷に気が付いたのである。


「回復が必要な時は早めに言え」

そう言って、ダンはまた後ろに下がった。

戦士のような素早い身のこなしが出来ない魔術師は敵に近付き過ぎると危険なのだ。

カナは黙って頷いたが、その顔は蒼ざめていた。


(さっき魔人を仕留めそこなったのは怪我の影響だろう)

ダンはそう考えた。


実際に回復魔法を受けると、防戦一方だったカナは攻撃に転じた。

「えぇぇい!」

幼い声で気合を入れ、鋭い突きを繰り出した。

それが躱されても、すぐに横薙ぎの攻撃に転じ、魔人の喉を浅く切り裂く。

あと一歩のところで頸動脈には届かなかったが、なかなかの攻撃である。


続けてカナは左膝を落とした態勢から、魔人の正面を左から右に向かって斬り上げた。

これは魔人の右脇腹から左胸にかけて、決して浅くはない傷を作った。

しかし、やはり惜しいところで致命傷には至らなかった。


ダンは魔法を繰り出すタイミングを計りながら、カナの戦いを見ていた。

(何故、攻めあぐねている?)

ダンは違和感を覚えていた。


今の2回の攻撃は、どちらも致命傷になっていておかしくない気がするのだ。

魔人も見かけよりは素早い動きがとれるようだから、躱されるのも無理のない事なのだが、素早さだけで言えば、カナは自身の父にすら引けを取らない。

怪我も今さっき癒した。

体も万全のはずだ。


(魔法の援護を待っているのか?)

そう思い、ダンはさらに神経を集中させた。

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