第6話 カナの異変

村人達は喚声をあげた。


しかし、ダンは驚き、叱責の声をとばした。

「何やってるんだ、カナ!」

「ごめん…」

カナは肩で息をしながら、小さな声で答えた。


魔人は腕を切断されたくらいで死にはしない。

今のタイミングなら首を刎ねる事も心臓を刺し貫く事もできたはずだ。

しかし、何故かカナはそうしなかった。


(何やってるんだ、カナ)

ダンは心の中でもう一度、先程と同じ台詞を繰り返した。


一刻も早くこの魔人を倒し、父達に加勢に行かなければならないのに。


だが、今は口論している場合ではない。


片腕を斬り落とされた怒りからか、魔人はカナに激しい攻撃を仕掛けてきた。

残された左腕を振り回し、カナを追い詰める。

身の軽いカナはその攻撃をすべて躱していたが、魔人の攻撃は一撃一撃が重い。

カナに躱された魔人の拳がぶち当たった大岩はいとも簡単に砕け散った。

まともに食らえば、一発で致命傷である。


最初にカナを吹っ飛ばした魔人の攻撃は上手い具合に鞘で受け止めたが、実はその時のカナのダメージもダンが当初考えていたより深刻だった。

肋骨に連結している肋軟骨が損傷していたのである。

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