巡る愛 ~坂井雅樹ver.~

俺は、服を畳みながら、遥くんにうなじが見えるようにした。


この跡を見たら、俺が振り返るころには遥くんの顔は真っ青になっているだろうな…。


本当はこれからも隠すつもりだった。

…でも、遥くんはまだ過去の俺のことを心においている。


そんなときに今の俺がどうあがこうと、遥君の心を掌握するなんて到底無理になる。


他人には近づかせないように目を光らせていたけど…。


まさか…過去の自分が一番のライバルと化すなんて考えもしていなかった。

不覚だな…。


「さ…坂井ッ…それ…。」


それなら、同じ自分なんだし協力してもらうしかないだろう?


「ん?」

俺が振り返らないうちに遥くんは俺の首に手を伸ばした。


「噛んだ跡って、年が経っても残るものなのか?」

フッ

遥くんの遠回しの言い方から、その言葉を紡ぎだす声から、動揺がひしひしと伝わってくる。


「ああ、どうだろうね…。」

でも、まだ言ってなんかあげないよ?


だって、もう答えなんて遥くんの中で出ているだろ?

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