2人だけの飲み会

せっかくのお疲れ会って訳で、坂井はアルコールを大量に買ってきていた。


…ザルか…。


「大丈夫ですよ?俺がほとんど飲むことになるだろうから。」


コイツッ…


「俺は、ペースを間違えなかったら、それなりに飲めるんだからな。」

俺はドヤ顔をかましながらそう言ってやった。


侮ってもらっちゃ困るからな、うん!




「へぇ、そうなんだぁ~。」

…ん?今坂井の声が少し低かったような…?


「お、おう!」

「なら…」


そう言うと、坂井は俺の顎を持ち上げた。


「どっちが先に酔うか競争しない?」

…は?


「先に酔った方が負けで、勝った人の言うことを聞くってのはどう?」


「はぁ?なんで俺がそんなこと「自信ないの?」…んだと?」


坂井は俺の顎を持ったまま、ぐいっと顔を近づけた。


「もし勝ったら、俺を自由にできるんだよ?」


うぐッ…


「それとも負けるとわかってるから嫌がってるの?」

うぐぐ…ッ


俺は坂井の腕を払った

「か、勝てばいいんだろ?そうしたら、俺の言う事聞くんだよな!?」


「フフッ、もちろん。」


坂井はよっぽど余裕なのか、笑いながらそう答えた。


ッ受けてたとうじゃねぇか!!!!!!!!!!


~30分後~


「遥さん、確実に酔ってるよね?」


「酔ってねぇもん、ばぁ~か!!」

俺は自分でもわかるくらい確実に酔ってしまった。


坂井と一緒に飲めているってだけで気分が良かったからだろうな。


でも酔ったこと認めちゃったら、坂井の言うこと聞かないといけないってのが妙にむかつくんだもん!!


絶対に認めてなんかやんないからな!!




「まったく…、認めないと後で具合悪くなるよ?」

「だからよって無いもんは酔ってないの!!」


俺は座っても勝てない坂井の背に膨れながらそう言いかえした。


「フフッ、なら俺のまねをしてできたら酔ってないってことになるよ?」


ん?まね?

気になった俺はすぐにその手に乗った。…いや、まんまと乗ってしまったッ。


「何すればいいんだ?」


俺の問いに坂井はにんまりと笑った。

…嫌な予感…ッ!!


「まずは、こうやってみて。」

坂井は目を閉じて、両手を大きく左右に開く形をとっていた。


…これを真似ればいいのか?


俺は何事もなく、真似た。


「つぎは、片足をゆっくりあげて10秒静止してみて。」

「それだけか?」


「うん、それだけ。」


おいおい、簡単すぎるじゃん!!

「楽だな、すぐできるっつうの…のわッ!?


うそ、まだ足を少し床から離しただけなのに、こんなにフラフラすんの?


「全然できてないじゃん~。」


坂井の声から、絶対こうなることが分かっていたのが伝わってきた。


「じゃ、俺の言うこと聞いてくれるよね?」

俺は声を出すのも悔しくて、首だけでうなづいた。


「…なにすればいいんだよ…。」


坂井は"考えるふり"をして、俺の目をじっと見つめて自分の膝をポンポンと叩いた。


「…え?」


「向かい合うようにここに乗って?」


「は?」

はぁぁあああああ!!!???

「嫌「俺の言うこと聞くんだよね?」…。」


「まさか、遥さんに二言はないだよね?」

…坂井め、わざと俺の気持ちを逆なでしてやがるなッ?


「やるよ!やればいいんだろ!!」

「フフッ、やった☆」


☆じゃねぇ!!

俺は渋々坂井の膝の上にまたがった。


悔しかったから、坂井の目をにらんでやった。…けど、見るんじゃなかったッ!!


坂井と目線が同じになって、ただでさえ近い距離なのに、余計に近づいてしまった。


「遥さん、顔真っ赤…かわいいッ!!」

くぅぅうううッ!!!!


「も、もう言うこと聞いたんだから、おわりでいいだろ?」

「え?なわけ~。」


…え゛!?


「一回だけなんて一言も言ってないよ?」


は、嵌められたっ!!


「つ~ぎ~は~…」

坂井は俺の顔をじっくり見ると、俺の唇に自分の指を付けた。


「ここにお願いしようかな~。」


そして、その指は坂井の唇に…ッ!!?

「もうやることわかるよね?」


き、キスってことだよね、これって…ッ

う、うわ~ッッッ!!!!


「む、無理無理!!お、お俺からなんて、その、えって、だ、だだだからッ!!」


「何慌ててるの?俺からだって何回もしてるよ?」


いや、わかってるけど!!恥ずかしすぎるだろ!!


「嫌なの?」

「嫌じゃないけど…は、恥ずかしい…。」


俺がうつむくと、坂井は俺の頭をやさしくなでた。

「なら違うことしよっか。」


え・・・?

「いいのか?」


「うん。」

なら、どうにか試練は免れた…のかな…。


「俺のやりたいことをする。」

「やりたいこと…、うわッ、エッ!!?」

俺は坂井に押し倒されてしまった。


思いっきり坂井をにらんでも、坂井の目はギラギラと上で光ってるッ。


「もう待ちきれないんだよね…。」

「さ、坂井…あのッ…ンっ」


坂井は急に俺にキスをして、耳元に顔を近づけた。


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