動き始める歯車

俺と坂井は、改めて会議室のドアの前まで来たんだけど…


「どうしたんですか?行きましょッ!!」

「いつまでその手を握ってるんだ?」


いつの間にか坂井は俺の手を握っていたッ!!


「は、放せよ…」

「そんな不安そうな顔してる人の手なんか離せませんよ?」


グッ…こんな時にも、坂井に見られてるってことに気付かされる…ッ。


「僕は平気ですから、ほら、入りますよ?」

ガチャッ


「はッ?」

このままでかよッッッ!!!!


「すみません、戻りました。」

「も、戻り…ました…。」


…絶対に…怒られるッ…!!



「あら、おかえりなさい、早かったわね?」

あれ、黄花さんの目が…怖くない…。


「せっかくなんだから、イチャついてくれば良かったのに。」


お怒りのようだけど…ッ


俺がうつむいていると、坂井は俺の肩に手を置いた。


「イチャついちゃったら、俺ら会議出てこれなくなっちゃいますよ?」

「は?さ、坂井?」


なーに言ってくれちゃってんだッ!!!!!!!!


「別にいいわよ?

見に行くだけだから。」


…はいぃ?


「生でBL見れるなんて…私は神に見捨てられてないのねぇぇ!!!!!!」


…はいいいいぃ!??

「お、黄花…さん?な、なんのこと「私のことは気にしないで!!好きに閲覧させてもらうから!!!!」…えぇぇ…。」

後に矢間根部長から聞いたのは、黄花さんは、"腐女子"であるという事だった…。


そんなこんなで、改めて会議が始まったんだけど…ッ


「だぁ~かぁ~らぁ~!!ここはそっちの案にするって言ってるでしょうが!!」


「それだとブランドが立たないって昨日あんたが言ってたでしょうが!!」



「まぁまぁ…」

「とりあえず座れ、な?」



「「あなた方は黙っててくださいッ!!!!!!」」


「…」

「…。」



俺と坂井は、お互いの意見を尊重しようとしすぎて、案が逆になって…。


結局、また口論となった!!


…なんだよ、俺悪くねぇしッ

向こうが案変えたのがいけないんだしッ!!



「ガルルル…」


「う゛う゛う゛…」



俺たちは互いに威嚇しながら離された。


「西島…お前、私情挟み過ぎだ…。」

「…私情なんか挟んでないですよ…。」


そして、しっかり矢間根部長から説教くらってる…。


あぁ…俺って散々なくらい情けねぇな…。

上司にも部下にも…怒られるなんて…。



「そうですよ。僕に当たらないでください…。」


「当たってねぇよッ…妥協すんなっていったのお前だろうが。」


「それは意見を曲げるなって言った「あー、ちょっと待て!!」」


坂井の言葉は、終わる前に矢間根部長に遮られた。


うわ、坂井にらみすぎだし…ッ!!

おいおい、噛み付くなよ~…ッ。



「じゃ、お前らが急に二人こいて、意見を変えたのは…互いを気遣ったってことでいい…のか?」



は?

「な、何でそうなるんですか?」


「なんでも何もないだろ。お互いに妥協しようとしすぎたら意見が逆になったってことになるだろ…ブフッ!!」

「…プッ…ククク…」


ちょ何、部長だけでなく黄花さんまで納得しちゃってんだよぉッ!!!!!!


「あはは、そういうことになりますね~。」


"なりますね~"じゃねぇぇええええ!!!


「おい、坂井…ノッテないでいいから助けろよッ!!」

「えー、俺愛されてるって実感できてて幸せなんですけどぉ!!」


ならなくていいんだよぉぉおおお!!!!

俺は坂井をぎろりと睨み付けた。


…背が高くて俺の殺気立った目線にすら気が付いてないみたいだけどさ!!


別にいいけど!!背が高いからって俺が悔しがる理由になんかならないし!!

え?気にしてた?


いついつ?覚えてないもーんだ!!!!


「まぁまぁ、とりあえず2つの案を足して2で割ればどうにかなるだろ。」


矢間根部長はそう言ってにんまりと笑っていた。


…この人最初からこのつもりだったなッ!?


なんか、すごくつままれた気分…ッ




結局、俺たちの言い合いは企画に生かされ(?)、値を10円程上げて、ブランド感は伺わせつつ、健康面を考えた商品が出来上がることとなった。


これって、矢間根部長方に謀られたんじゃ…。


俺は一人悶々と考え込んでしまっていた。


「遥さん?」

「んぁあ!!?」


「…すみません、怒ってますよね?」


あー、そんな悲しそうな顔してんじゃねぇよ!!

俺が悪いような気がしてくるじゃん…。

俺のキレ具合が相当怖かったのか、坂井はあれから目すら合わせてはこなかった。


…別にそんなに怒ってたわけじゃなかったんだけど…。

って、俺は何回も伝えようと考えてたんだけど、



企画が進むにつれて、お互いのチームで動くようになり、話さなくなっていった。

せっかく仲直りもできたのに…。


…なんか、寂しいな。



「…い、西島?聞いてるか?」

「ッ!!はい、聞いてます。なんでしょうか?」


「ブッ、いや、『なんでしょうか?』って言ってる時点で聞こえてないの認めてるようなもんだぞ?」


うッ…、やべ…。

また前みたいに、『一回で聞いてろ』的なこと言われちゃったら…ゾゾゾッ


「坂井か?」

「…え、いや、なんでもな「俺を見くびるなよ?部下の表情くらい読み取れる。」…ッ!!」


「あ、あの…さか、俺の後輩はあれからちゃんとやってるのか、ちょっと気になっただけですよ…。」


「あぁ、坂井ならちゃんとやってたみたいだな。黄花が褒めてた。」

「…ならよかったです。」


こんな時くらい心配してるって言えればいいんだろうけど、…俺って可愛げないな…。





「呑みにでも誘ったらどうだ?」

「呑み…ですか?」


「ちゃんと後輩にも配慮してやったほうが、後々いい関係を気づくきっかけになるぞ?」


そうか…。

企画が落ち着いたことだし、…誘ってみようかな。

庶務課の仕事も片付いたから、早めに切り上げることになった。


ってかした。っていうのも、坂井を飲みに誘うつもりで手を高速にして早く切り上げられるようにしてきたんだから!!


っていっても…、どうやって連絡しよう…。

会社で何回も営業課の前を通ったけど、話しかけるどころか、営業課のオフィスに足を踏み入れることもできなかった。


はぁ…どうしよう…。

俺は時間の確認のために携帯を開いた。


え?携帯の機種が古いだって?

いいんだよ!この携帯は大切なの!!


これは、雅樹が持ってた機種なの!!

盗ったわけじゃないぞ!!人聞きが悪いな、もう!!


って話に戻すけど!!



携帯には着信とメールが1着ずつ届いていた。

選択すると、両方とも坂井からのものだった。


何だろ…急用か…?


俺はまずはメールを開いた。




From 坂井

To 俺

件名

ーーーーーーーーーーーーーー

お疲れ様です!!


企画、こちらも落ち着きましたよー!!

やっぱりやりきるとこう、グッとくるものがありますね!!(ノд`)ウルッ

ーーーendーーー



なんか坂井らしいメールが送られてきていて、少し安心した。


どうやら機嫌もよさげだし…家帰ったら日にちの確認だけとってみよッ、うん!


家に戻って、すぐに出ていけるようにラフな格好に着替えた。

うん、変じゃないな。


いや、別にあいつに見られるから服気にしたわけじゃないけど。



ってそんなこと言ってる場合じゃないッ


電話しなきゃッ

俺は携帯を手に取った。



ん?

また着信入ってる…?


あ、坂井からだ。

バクンッ


俺、何緊張してんだ?

鼓動が早い…ッ!


…ってか、二回も電話してくるって…急用な気がしてきた。


…折り返すか。


俺は坂井を選択して、発信ボタンを押した。


プルルル…



すぐ出ろよ~ッ


発信が鳴るたびに緊張が増して来ちゃったしっ!!


プルッ

「はい、坂井です!!」


あ、出た。

ドクドクドクドクッ


おいおい、何これ、心臓破裂しそうッ

お、落ち着かなきゃッ


「おう、俺だ。」

「オレオレ詐欺さんですか?」


こいつッ、俺だってわかって聞いてやがるな!?


「ッ…、西島だ。」


「あはは、遥さんでしたかぁ~。」

「お前、絶対わかってて聞いてただろ。」


「フフッ、はい!!」


”はい!!”じゃねえッッッッッ!!!!!!


って切れてる場合じゃなかった。

用事くらい確認しないとだ。


「…で、何か用事だったか?」

「はい!!あの、今日ってもう家に戻ってますか?」


「あぁ、家だ。」



「その、よかったらお疲れ会みたいなのやりませんか!?」

「お疲れ会?」


「はい!!二人で。」


俺と考えることと同じなんだな・・・。

ってキュンとはしてない…はず…多分…。


「ああ。いいけど、どこで飲むんだ?」


「どこって、先輩の家ですよ?」

…は?


「なんで俺んち?会社から近いところあるだろ?」

「もう、先輩の家の前なんで。」


はあぁぁあああ????????



ピーンポーン


ウソだろ、おい。

部屋片づける時間すらないじゃねぇか!!!!←そっちかい。


「は~い!!」

「坂井です!!」


…逃げる暇すらねえしっ


ガチャッ

「ふつう許可なしに先輩の家に押しかけるバカあるかッ、ああ?」


「許可も何も、俺たち付き合ってるんだし、いいじゃないすか。」

え・・・?


付き合った記憶がないんだけど!!

俺の記憶間違い…なのか?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る