誤解の事実

ゴタゴタと言い合ったあと、二人で部屋を出…ようとしたら、ドアをあけた途端ッ!!



…矢間根部長が仁王立ちして待ってらした…!!!!


「お、おはようござ「おはようございます、変態部長」ッ?」

さ、坂井ぃ!?


「フッ、酒は抜けても記憶は残ってたか。」


「ははは、部長こそ~。」

…目が、笑ってませんよぉ、坂井くーんッ!!!!!!


「はぁ…ライバル同士が仲良くてもいいが、お互い不利にならない案でも浮かんだか?」


「…ま、そりゃぁ浮かびましたよ。」

おい、坂井…浮かんでないのわかりやすすぎだから。



「フッ、ならもうこっちに渡してもらっても?」


ギュッ

「グフッ、さ、かい…ッ、く、苦しッ…絞まってる絞まってるッ…。」


「ハッ、す、すみません、生きてますか?」


「げほっげほっ…」


坂井、態度に出しすぎだって…バレちゃうから。


「何も取って食わねえよ。」



「…チッ、お先に失礼します。」


こーらー…

さーかいー…舌打ちしちゃダメでしょーがーッ!!!!!!!!


朝から心臓が痛い…ッ


「お、そうだ、西島。」

「…はい?あ、坂井が失礼なことを…す、すみませッ…?」


謝ろうとしたら、矢間根さんは俺の耳に口を近づけた。


「過保護な恋人だと、苦労するな。」

「ッな、なな…なッにを、い、ってらっシャルルルか…」


「おい、文になってねえぞ。ククク…。」


ガチャッ


「おはようございます。」

「おはよっす。あれ、黄花は?」


「まだ…みたいですね…。」

会議室には坂井がぽつんと座って資料をまとめていた。


あれ…おかしいな…。黄花さんいつもなら早く来るのに…。


「あいつならもっと早く来るはずなんだがな…。」

矢間根さんは腕時計を眺めながら出入口を伺いだした。


俺も自分の腕時計を覗いたら、もう9:30を指していた。


「僕、呼んできましょうか?」


「あ~、いや、やめとけ。嫌な予感がする。」


なんだろ・・・。

ギイ…バタン。


10分後、黄花さんは俺たちが見つめるドアと反対のところを開けて、やってきた。


「おはようございます。遅れてごめんなさい。」


黄花さんの声は変わらなかったけど、目が赤く腫れていた。


「黄花、どうしたんだその顔。」


矢間根さんは真っ青になって黄花さんに駆け寄った。

「平気よ…」


「…坂井、昨日黄花と話したんだろ?」


え、そうなのか…。

…もしかして、もしかしなくても…昨日話中に飛んできたってことなのかな…。


「坂井、俺からも頼む。黄花と悪い仲にならないでくれ。」


矢間根さんは、少し悲しそうな顔をして頭を下げた。


って事は…坂井、お付き合い申し込まれたのかな…。

受け入れるかな…。


受け入れた方が、会社や坂井の為にはなるんだろうな…。


「」

「黄花はいい女だぞ?」


坂井は黙ったきり、矢間根さん達を睨みつけていた。

…坂井…最近睨みきつくなったか…?


…ってなにか反応しろよ。


「西島、お前も良いと思わないか?」



…なんで俺に聞くの…?

…矢間根さん、俺の気持ちにも、坂井の気持ちにも…気がついている筈なのに…。


俺は坂井の様子を見たけど、こっちをチラッと見て、すぐにそらしてしまった。



坂井の反応に、胸がぎゅうぎゅう締め付けられる…。

「…すみません…、お手洗い…行ってきますッ!」


俺は耐えきれなくて震える足でトイレに向かって走った。


一番近くのトイレに駆け込んだはいいけど…、簡単に涙が流れてきた。


袖でゴシゴシこすったって…止まってなんかくれない…。



「弱いな…俺…。バカみたい…。」

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