隠せない心実②

次の日


「…さん、…るかさん。」


「…ん…」

心地よい声だな…。ずっと聞いてられる…。


夢見心地でもう一度枕に落ちようとしたのに、急に体をゆすられた。


「遥さん、起きてください。モーニング来ましたよ。」


あ…、懐かしいと思ったら…坂井か。

俺、なんで坂井に起こされてんだ?


…確か…、バーでカルピス飲んで…、ああ、いろいろあって、坂井が助けてくれたんだっけ…。


俺、なんて顔して寝てたのかな…に、ニヤけてたりして…ッ…!!




…目を開けるのが怖い…。あんなこと聞いちゃって、普通に接せるのか…。


俺がわたわたしてる間に、坂井の手は離れていった。


ホッとした…筈なのに、坂井の手の温もりがあったところが、ひんやりと感じた

「起きないつもりですか?」


そんなつもりはなくて…ただ恥ずかしいんだよッ!!


悪気なんかないよ!!


「フッ…、なら。」


…!?

なら?

ならなんだよッ!!!!


ドキドキしながら次の言葉を待った。




…チュッ…。

…ッ!?


「…え?」

「え…。」


あッ、ヤベッ、声だしちゃった。


「…遥さん。」

「ご、ごめッ…あ、あの…い、今起きたからッ!!」


って、そんなこといいたいわけじゃなくてッ…。



「全く…。心配ばっかりさせないでよ。」

「…え?」


ガバッ

「ッ!?!?さ、坂井!?」


なんでっ、坂井が俺に抱きついてんの!?


ッし、しかも、なんでこんなに締め付けられてッ…んの…グッ…。


「ちょ…く、苦しいんだけど…ッ!!」


「ごめん…力緩めるから…もう少しこのままでいさせてッ…ください。」


「…ッ?」

「遥く…さんが、無事ていてくれてよかった…。」


「…坂井…?」

「…もう…お酒飲み過ぎないでください…。」


坂井の声は、何かで締め付けられてるみたいに、苦しそうで…。


「……わかった…。」


俺のつぶやきに、坂井の腕はまたきつくなった。



……。



ところで…

「いつまで抱きついてるつもりだ?」


「ッす、スミマセンッ!!!!すぐどきます!!」


坂井は慌てて俺を覆う腕を緩めた。。

ズキンッ


…離れて落ち着いた筈なのに…胸が苦しい…。



「遥さん。」

「…な、んだよ。」


「」

「」

なッ…黙んなよ…。

しかもじっと見てくるなッ…!!


「…ご飯食べましょうか。」

「…おう。」


なんだ、飯か…。

ズキンッ


あぁ、まただ。

今日は…本当に調子狂う…。


嫌な筈なことが…むずがゆいくらい嬉しかったり…。



そこからは、坂井は何も発さなかった。


「あ…あのさ、…」

「どうかしましたか?」


振り向いた坂井はいつもどおりの笑顔で…騙した罪悪感がモヤモヤと胸の中に渦を巻く…。


「なんで…俺が坂井のとこで寝てるんだ?」


あ…、坂井の顔が歪んだ…。

聞くんじゃなかったな…。


「や、やっぱりなんでもな「あなたがッ!!」


…?

「あなたが、危なっかしいから…警戒心持たないから…」


「…え…。」

「だから、部長さんに任せてたら、企画がダメになるかもって…クスッ」


なッ!!


「失礼なッ!!」

「だって…あんな感じで本音全部打ち明けちゃったら、部長さんが不快になっちゃうじゃないですか。」


はははッ


て…コイツやっぱり失礼だなッ…!!


「坂井お前、最悪だなッ。」

「フフッ」


「ッこんの、坂井コラッ!!」


俺は坂井の背中を叩いた。

坂井はまだ笑ってやがるし…!!



…でも…こんなこと…しばらくなかったしな…。

俺も自然と笑えた。


「…遥さん。」

「ククッ、んあ?」


「…。」

「なんだよ、黙んなよな~。」







「好きです。」

「…え?」


俺、今なんか聞こえた気が…。


「だぁかぁらぁ、聞こえなかったんですか?」

き、気のせいに決まってる…。


「き、聞こえなかった。」

「…じゃぁ…」


そう言うと坂井は俺の両腕を優しく掴んだ。


「あ、あの…坂井…ッ!?」

そして腕を引っ張って坂井の胸のうちに入れた。


「好きです。…今まで以上に。」


坂井の耳元で響いた声が心にまで染みてきた。

ああ、もうダメだ…どんなに気を張ってても…自分の気持ちを消すなんて無理なんだな…。


「…あんなことしたのにか?」

「え?」


ハッ、違うよ!

こいつは雅樹じゃないのにッ!

こんなこと言いたいんじゃなくて…


「過去の人の事言ったからですか?」


ホッ、そう取ってくれたか…。

俺は首だけで頷いた。


「クスッ…そんなこと気にしてたんですか?」


「な、なんだよ…こっちは本気で悩んで…ッ!!」


顔が…近いッ!!!?

「フフッ、顔真っ赤。」


「なッ!!…」

俺があわあわしてる間に、坂井は俺の顔を坂井の大きい両手で挟んだ。


「確かに、超~~~~~~~~~妬くけど……、今は俺なんでしょ?」


「ッ!?」

勝手に俺の喉がひゅっと音を立てた…。


「…坂井…俺…ッ?」


続きをいうのは、坂井の人差し指で止められた。

「遥さん…、それから先はまだ聞かないですよ。」


…なんで…?



「クスッ、そんな泣きそうな顔して…。まだ企画案決まってないじゃないですか。ライバルとしてもう少し頑張りましょ。」


「…なんだよ、それ…。」

カッコ良すぎやがって…。


「気持ちがわかっちゃったら妥協しちゃうかもしれませんよ?」


ハッ、それは絶対にダメだ!!!!


俺はくあっと顔を上げた。

坂井…なんて顔してんだよ…。


「妥協許しませんからね。」

「わ、わかってるやい!!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る