花の夢

坂井が去って3日がたった。オフィスは相変わらずバタバタしている。むしろ坂井に任せっきりだった書類が全て俺に回されて…見事に3日寝れてない…。


まぁ、忙しくなくても寝れるような精神状態じゃなかったけど…。



さっきの朝会も多分寝てたのか…何言われたか記憶にない…のにメモは取ってた。


徹夜でまとめた資料を届けるために廊下に出た。

…間に合ってホッとしたからか…眠い…。あぁ…寝ちゃダメだ…しっかりしないと。


階段を下りだしたその時ッ!




フラッ

あ…転ぶッ!俺は目をギュッと閉じた。



バササッ!!

…あれ…痛くない?目を開けると持っていたファイル達は全て落ちていた…。


でも体は無事だった。…てか、誰かの腕が俺のお腹に巻かれてるんですけど…。



「…危ねぇ。」

「え…?」


俺が顔を上げると…知らないオッサンがいた。体勢が戻ってからお礼をと頭を下げた。


「あの…ありがとうございました。」

「次から気を付けろよ?鈍臭そうだし。」


「…はい?」

「じゃぁな、ニシジマ。」


…サイトウなんですけど…。

…あぁ、そうか…ネームプレートを見たのか。



あっ…ファイル!!

振り返って階段の下を見ると、坂井がファイルを揃えていた。


…なんて無情なんだろう…。

トントン…

一歩ずつ近づく足音に、体が震え始めた。


「どうぞ。」

「…あぁ、ありがとう…。」


「…では。」

「…あ…。」

…行っちゃった…。

あんなに素っ気なくなるもんかな…。

3日しか経ってないのに…。


はぁ…。俺は疲れる体を奮い立たせて、課長室に急いだ。


…後ろで誰かが見ている事など知るよしもない…。

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