行方不明者と口を閉ざす者

そんな、馬鹿な思考に浸ってても平凡な俺はファンタジーにも嫌われているので挑んで諦めて、若者に嫌われる中年コース真っしぐらってことさ。

ようやく諦めのついた頭を置き去りにして、いつも通りの道を見てみれば見かけない男が1人ガクガク震えている。

先ほどまで、己の平和な思考に浸っていた脳は追いついていないようでなんだ?この男は…精神的にいっちまったのか?と、酷い回路を辿る。

その回路が、正常に動き出したのは数十秒のことだった。

冷静になってみれば、精神的にいっちまっているだけではないらしい。

血で汚れた服には、防弾ジョッキがボロボロのまま意味もなくぶら下がっていた。

男の腰には、銃の弾がぶら下がっており彼の震える腕の中で強く抱かれた銃は、もう使いモンにならないようだ。

ここで、紳士にならなければ男じゃねぇ!と声掛けに行こうと思ったが本当は興味本意だ。

「すいません!…大丈夫ですか?結構お怪我されておりますが…」

声を掛けて見ても返事は返ってこない。

聞こえねぇのか?

「すいませーん?大丈夫ですかー?」

さっきよりもっと、大きな声で問えば怯えきった顔を上げられいきなり掴みかかって来る。

「あ…ぁ…ぉ、俺は助かったのか!?なぁ、あの悪夢はもう終わったのか?」

あー…コイツもう手遅れっぽいな。何で、話しかけたんだろ…時間ももう無いし。

俺が、返事をしないのが気に障ったのか、それとも気の短い荒い奴なのか訳のわからないことを叫び出した。

「…なぁ!楓は?俺は、楓と彼処を脱出したんだ!そうしたら、光に包まれてその時楓の悲鳴が聞こえて、それでな!俺怖くて、銃構えて楓の名を叫んだんだ。そうしたら楓の悲鳴が途絶えた途端にここに…。」

なんだ、只の誘拐犯から逃げて来た野郎か…。

その誘拐犯は、相当なサイコパスで気でも狂って妄想を信じたんだろう。

こういう狂った狂人者程、否定すれば命なことは目に見えているので話を合わせる。

『あー、それ詳しく教えて頂けませんか?』

まぁ、喋らしときゃ正気に戻るだろう。

「ああ、いいぞ。実は、俺はチャレンジャーに選ばれたんだ。その時、チャレンジャーになったその時期のやつ全員集められて…って。」

チャレンジャー…だと!?

『俺も、チャレンジャー目指してたんですよ!』

眩しい程の眼差しで見つめるが、その男は先程よりも酷く怯えていた。

何に、そんな怯えてるんだ?

「あ…ぁ…後ろおおおおおおおおおおおお。」

あん?後ろ?指差され振り向いてもいつもの街並みだ。

視線をチャレンジャーと自称する男に戻せば、急に踠き苦しみだした。

「ああああああ!楓えええええ。許してくれ!見捨てた訳じゃない!見つからなかった…そう!見つからなかったんだ!やめろ!それ以上、近ずくな!俺は、まだ死にたくねぇんだ!頼む!嫌だああああああああ。」

最初は、何言ってんだコイツって見ていたが自称チャレンジャーの男の四肢の関節が曲がらぬ方向に曲がり…兎に角ありえない事になっていた。

真実を語ろうとした者と行方不明者の女(楓って奴)は、チャレンジャーって事か?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

総員銃を掲げよ!! 素敵な幹部様 @Kotobadekataru09

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ