フレンド

「……よし、フレンド登録完了だ。」


哲郎が肩から手を離す。


「フレンド?」



ジェームズが首をかしげる。



「そうだ。フレンド登録、一定時間以上相手に触れているとできる。これで俺たちは運命共同体、パーティってわけ」


握手していたてを離したカルロスが、説明を始める。


「俺たちはこの戦闘中において、深い絆で結ばれた。ほら、頭の上を見てみな?」



アドルフが自分の頭の上を指差し、ジェームズに見るよう促す。



「……なんだ?それは」


アドルフ……だけでなく、カルロスと哲郎の頭上にも、細長いリボンのようなものが浮いていた。


「HPゲージだ」


哲郎が補足を入れる。


「HP……ヒットポイント。つまりは体力だ。これがゼロになると俺たちは死ぬ」


哲郎が続ける。


「なるほど、じゃあ今は全員満タンなんだな」


「そういうこと、ただ、色を見て欲しい」


カルロスが、さらに続けて頭上のゲージを指を指す


「色?ああ、赤と黄色があるな、どんな意味があるんだ?」


アドルフと哲郎は赤、カルロスは黄色のHPゲージだ。


確かに何かしら意味があるように思われる。


「簡単に言うと何回死んだかだな、一度も死んでなければ緑色をしている。」


カルロスが、なんでもないように言う。


「一度死ぬと黄色、二度目だと赤だ」


つまり、このゲージはこの世界での命を表しているということだと理解するジェームズ。



「……?だが哲郎はまだ一度目なのでは?」


疑問に思うジェームズ。


「あー……それはだな」


気まずそうに頬をかくカルロス。


「一度でも、あの檻の中にしばらくい続けると赤になるんだ」


アドルフがカルロスを睨みながら答える。


「だっ……だって‼︎あの順じゃないと、哲郎が張られてたし」


「そうだ、あの状況ではあれで正解だ」


哲郎もアドルフに反論する。


「冗談だ、俺だって同じ状況ならそうした」


アドルフも、本気で言っていたわけではないようで、あっさりと引く。


「なんだよ、おどかすなよ」


「すまんすまん。お前があんまり面白い顔してるからつい」



どうやらこれもいつものノリというものなのだろう。




「まあ、フレンド登録すると、こんな感じで色んな恩恵が受けられる。覚えといた方がいいぞ」


「わかった」


そして再び話はこれからの作戦についてに戻る。


「さて、改めて……2回殺られてリーチのアドルフ、そして救出がおくれてリーチになった哲郎。お前らは残念ながら前衛だ。死ぬ覚悟をしとけ?」


カルロスが切り出した。


「ああ……」


「だな……」


覚悟を決めているらしい二人が、渋々と言った感じではあるが返事をする。





「リーチって?どういうことだ?」


疑問を口にするジェームズ。


「ああ、お前もさっき見たろ?クリッピーだよ」




「クリッピー?ああ、見たが?」


一度見たら忘れられない、あの気味の悪いバケモノ。


「俺たちは化け物に殺されると奴のいる檻にリスボーンするだろ?が、あいつに食われた場合、次はない。」


「なんだと⁉︎」


さっきの話にあった三回目にリスボーンすると、クリッピーは容赦なく食ってくると言う話はそう言う意味だったのか。


「つまり、HPゲージが赤のやつはリーチ、次殺されたらクリッピーに食われるってわけだ」


「そうなると、どうなるんだ?」



「それは……」


三人の顔が暗くなる。


そこである程度察したジェームズが話をそらして、以後触れることはなかった。

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