第八話 王都脱出
王国マルスプミラ、王城。
「国王様……」
高齢の男性が嘆く。
謎の仮面の襲撃から数十分が経ち、仮面を追っていた三人はその道中で倒れていたアリュールを見つけ、現在は国王と共に医務室に居る。
「しかし、アリュールまで気絶させ、国王様に銃を撃ち、王城から脱出出来るほどの人物……。一体誰が」
刀を見つめながらルナールが唸る。
「アリュールもアリュールだ、国王様を逃がすどころか自身すらやられるとは、とんだ恥さらしだ!」
イリアスが叫ぶ。
「まだ王都のどこかに隠れているかもしれない、手配はしてある。見つかり次第仮面を取っ払って公開処刑にしてやるぞ!」
続けてウルスも士気を上げる。
しかし、次に口を開いた七つの剣の中で最も若い男の声で皆が黙る。
「簡単に追い払われた君達がもう一度挑んだところで、王都の民の前で逆に公開処刑にされるのがオチなんじゃないかな?」
「メスト! 貴様!」
ウルスが怒りを露わにする。
「国王の前だ、やめないか!」
今度は高齢の男性が叫ぶ。
「オーディス様の言う通りだ。今我々がしなければならないのは仲間割れではない」
ルナールの声。
オーディスと呼ばれた高齢の男性が立ち上がる。
「イリアスは王都の兵に伝達、奴を逃がさぬよう兵を配置せよ!」
「ルナール、ウルスはここで待機、もしもこの場にあの仮面が現れた場合は国王様とアリュールに指一本触れさせるな!」
「イーガル、メストは私と共に王都を探索し、見つけ次第可能ならば奴を生け捕りにするぞ!」
素早く指揮を取る。
「了解です」
「必ずお守りすると誓います」
イリアス、ルナールの返事。
「えー、僕は一人のが気楽で戦いやすいんだよね。連携とか苦手だしさ、まあ、オーディスの命令なら仕方がないか」
イーガルのどこか怠そうな、退屈そうな返事。
「承知しました。オーディス様」
メストの声。
ウルスの返答がない、何かを堪えているような様子だ。
それを見てオーディスが声をかける。
「ウルスよ、ルナールと共にここを任せる意味、分かるな? もしもあの仮面がまだ王城に居た場合国王をお守りできるのは君だ」
俯いていたウルスが顔を上げる。
「はっ! 必ずやあの仮面の首を」
実に単純だ、だがそれを知ってオーディスがウルスの扱いなれているにも確かだ。
「それでは我ら七つの剣、誇りと共に出陣する!」
オーディスの掛け声と共に各々が言われた配置に着く。
「……」
(ふふ、さすがオーディス様、もう動き出しましたか。でも残念ながら仮面の人物を見つけることは出来ません、何故なら……)
一方のミルマとクローゼ達。
「出口が見えるよ!」
「ええ、一応警戒しておきましょう。出た瞬間包囲されている等も考えられるから」
「うん!」
王城の地下、王都の下を通って地図通りの場所に辿り着いたミルマとクローゼ。
「ここは……」
出た先で見た光景は、山の上にある墓地だった。
「見て、クローゼ、あれって……」
ミルマの指差す方角、そこには中立国デトタフデアが見えた。
「デトタフデア……随分と都合の良い場所に出たわね」
「追っ手の様子はないわね、一旦落ち着きましょうか」
「あの仮面の人、何が目的なんだろ、もしかして知り合いだったりして」
「そうかもね、でも味方とは限らないから警戒するに越したことないわね。あの仮面にとって私達はまだ利用価値があるのかもしれないし」
「うん、まずは中立国で補給と休憩かな」
クローゼが少し驚いたように。
「あら、ミルマの事だからそろそろ魔族を倒したくてうずうずしてるのかと思ったけど違ったのね……」
ミルマは少し怒ったように。
「私だって充電は必要だよ! 中毒みたいに言わないで~!」
「それに、七人? 倒すつもりで神経を研ぎ澄ませてたからか、疲れたよー」
「そう? 私はこのまま魔族殲滅の予定だったけど、ミルマがそういうなら仕方ないから休憩していきましょうか」
(まあ、私もアリュール、七つの剣、そしてあの仮面、警戒しすぎて疲れてるんだけどね……)
「じゃあ、ここ、不気味だしさっさと行きましょうか」
「それじゃあ、いざ!中立国へ!」
二人は中立国デトタフデアへ向かう。
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