パトロンとソシャゲの関係

そもそも「パトロン」とはどういうものなのか。

いろいろ端折って結論だけ言わせていただくならば、


「将来に期待して事前に投資する行為」


である。


パトロンの歴史は古く、ヨーロッパでは中世から、おもに芸術活動を支援する人々がそう呼ばれていた時代がある。有り余る財産を持ち、人脈も豊富な貴族たちが、芸術家を囲ったり、資金援助をしたり、人脈を広げさせたりすることで捜索活動を支援した。貴族側のメリットはステータスである。現代の言葉で簡単に説明するなら、


「あいつはワシが育てた」


となる。なんて便利な言葉なのだろうか。

もっとも、パトロンの存在は支援を受ける芸術家にとっても悪くはなかった。衣食住の心配をせず、雑事も行わず、支援を受けてひたすら芸術活動に専念できるのである。古くは資金洗浄マネーロンダリングの手段としても用いられたらしいのだが、今回はそこまで細かいことは考える必要はない。執筆している私まで眠くなってしまうので打ち切りとする。


それはさておき、パトロンの在り方は多種多様である。日本でなじみが深いのは相撲のタニマチだろう。……などと書いたところでここの読者層がタニマチとなじみがあるはずもなく、なぜ私はタニマチを選択してしまったのかと頭を抱えているわけだが、さてどうしたものか……。


……ああ、「ふるさと納税」はどうだろう。所得税や住民税を納付する代わりに、自分が応援したい自治体に直接税金を納められる制度である。しかし、ふるさと納税の魅力はそれだけではない。「返礼」という仕組みにより、納めた税金の一部が地産品などの形で返ってくるのである。


もっと話題に出やすい例ならクラウドファンディングもある。「Kickstarter」などは有名どころのひとつだろう。簡潔に説明するなら


「やりたいことがあるから活動資金を寄越せ!いっぱいくれた人にはオマケもあるよ!」


という感じだろうか。インターネットにおけるパトロンの極みはクラウドファンディングかもしれない。失敗するかもしれないが可能性に投資をしたいというのは、かつての芸術家パトロンに近いものがある。

支援を求める対象が貴族ではなく普通の人々という違いはあるものの、逆にすべての人がパトロンになれるということが証明されたと言ってもいい。

貴族にとっては名誉でしかなかったが、今の我々には物欲が提示されており非常にわかりやすいのも魅力だろう。


なんだか話が脱線していた気がしなくもないが、今挙げた例で言えば


芸術家は将来の作品と名声のために

ふるさと納税は自治体の未来のために

クラウドファンディングはプロジェクト完遂のために


先行投資をお願いするパトロン行為にほかならない。




さて、賢明な読者の皆様は、ここまで話したらご理解いただけていることだろう。


そう、ソシャゲのガチャとはパトロン行為なのだ。


ゲームの発展のために寄付し、その場でなにかがランダムでもらえてしまうのだから。

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