雨とペリーのそのペニー

 雨が好きだ。

 特に休みの日の雨は、家にいる理由が出来るのでノンビリと過ごす事が出来る。晴れだと落ち着かない。身体全体で陽の光を浴びないといけないような強迫観念に捉われてしまう。小説を書く時は、場面はほとんど晴れにしている。その代わり、夕方が多いような気がする。


 旅行初日の雨は好きか?

 もちろん、嫌いだ。

 旅行というのは外に出てなんぼの所があって、宿に篭ってムスっとビールなどを飲んでいたら、家にいるのと変わらない。例外として台風は好きだ。以前の鎌倉では台風がビュービュー暴れまわっていて、高波だわ打ち付ける雨だわで、外を眺めていて全然飽きなかった。それからカラっと晴れて綺麗な夕暮れなんかが見れたから最高である。暴風雨好き、などと不謹慎で申し訳ないとは思うけど、社会が僕に対して不謹慎であるのでここはひとつ、やむを得ないと思っていただけると嬉しい。


 初日はシトシトと雨が降っていた。

 僕が一人だったらこれ幸いと文章を書いちゃえば良いのだけど、ここはスポンサー(の協賛者)である奥さんの機嫌を取る必要もあるし(奥さんは深刻なレベルで天気に機嫌が左右される)、そもそも書いている時に話し掛けられると精神衛生上良くないので、百歩譲って読書である。活字を目で追いながらヒルナンデスやサラメシについて求められた以上の返事をするという技術は、おそらく相当数の既婚者が苦労して手に入れたスキルではなかろうか。


 温泉などに浸かりながら、僕は改めて深く、深くどうして下田にいるのだろうと考えた。


 この旅行記だって書きたいと思っていたが、雨ではネタも糞もない。本気で「下田だからペリーの下ネタについて書こうか」と思った。例えば、ペリーは日本の開港を要求したのは史実であるが、上陸後、日本人女性に開港を求めた事はあるのだろうか? そしてそのキーであるおペニペニーはいかほどの口径であったのか? という事を調べてみるのも一興だと思った。外は雨が降っていて、露天風呂はジンワリと身体を暖めた。大浴場にスマホを持ち込む若者に一生幸せになれない呪いを掛けた。だって、ここは下田なのだ。下ネタをかまして何が悪い?


 旅行地での初日の雨は、このようにして人を下衆くする。ペリーのオペニペニー(言いたいだけ)など、どうでも良い。検索履歴に並ぶワードを想像するだけで気分が暗く澱んだ。何なんだ、一体。


 しかし雨では身動きは出来ぬ。

 本当に電車に乗って「ハワイ、ハワイ」と喜んでいる時が一番のピークだった。まんじりともせず、夕食を食べて初日は終了した。持ってきた本を読了して、真剣に面白くて感動した。


 迷宮クソたわけ

 https://kakuyomu.jp/works/1177354054885436251


 書籍化されているけど、こちらでも読める。

 この旅行記の一兆五千億万倍面白いことは保証するので、ここまで読み通した物好きなお方は是非読んでみることをお勧めする。


 上記小説の元はゲーム「ウイザードリィ」の印象ではあるが、僕の中ではメガドライブ版「シャイニング・アンド・ザ・ダークネス」の世界で繰り広げられた。単純に、ウイザードリィで遊んだ事がないからだ。PC版「ダンジョンマスター」は地下二階で挫折した。このような緩いRPG経験者でも、大変とっつきやすい小説だと思う。想像したストーリーを文字として捉え、物語として落とし込む作業は一見誰にでも出来そうな気がしがちだ。でも、普通の人には出来ない。迷宮クソたわけを読めばその極意が何かが伝わるだろうし、「そんなの知らん! 面白ければええんや!」という人は、小説として純粋に楽しめる。そして面白ければ、書籍版あるいは電子書籍版の購入をお勧めしたい。絶対に、続きがすごくすごく気になるので!


 面白ければええんや!

 って人がここまで読んでるかというと、果たして絶望的である。

 いやいや、ちょ、待てよ。


 だって、下田だぜ?

 

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