第8話沖縄旅行 with サイクリング② 1日目の①

 関西空港へと向かうには当然電車を使います。

 大阪・ミナミの玄関口『なんば駅』から直通の路線があります。

 特急列車もあるのですが、最近財布のひもをギュッと縛っているので使いません。

 自宅からなんば駅まで電車にお金を払うのも嫌です。

 どうせ自転車を沖縄へ持って行くので、自転車でなんばまで行きました。

 だいたい一時間ぐらいの距離です。

 駅についたら自転車を分解して、袋に詰めて電車に乗ればいいだけです。

 分解といっても工具がいらず、レバー的な物を少しいじればタイヤが取れるので、

 10分ぐらいでパッキングできます。

 これを『輪行』といいます。

 『輪行』する手間を鑑みても、

 調べた電車がなんば駅から出る一時間半前に着けば余裕で間に合います。

 が、どこでどう間違ったのでしょうか?

 なにか、くだらない物を探しいて手間取っていたのだと思います。

 家を出るころには電車が出るまで一時間を切りそうでした。

 物理的に間に合わなさそうです。

 なんば発をあきらめ、自宅から最寄りの駅から電車に乗りましょうか?

 否。

 自宅の駅からなんばへ向かうと、必ず乗り換えが発生します。

 乗り換えは大っ嫌いです。ですがそれは『輪行』したときに限ります。

 知っていますか? 分解したとはいえ、僕の自転車は15kgほどあるんです。

 タイヤの細い、スリムな自転車じゃありませんから。

 おまけに今回は、テントを張りつつの野宿旅を実行しようと思っていたので、

 キャンプ用品を含めると、30kg近くになるのです。

 肩掛けベルトは肉に食い込み、荷物は宙に浮かすのが精いっぱい。

 担いだ自転車が揺れるたびに、フレームが脛や膝にガンガン当たり、

 一度に30m進むのがやっと。その度に10数秒は痛みを逃れるための休憩。

 改札では通り抜けるのに難儀し、エスカレーターでは周りからの白い目に耐えなけ

 ればなりません。

 おまけに『なんば』にはいくつも駅があり、別会社の路線に乗り換えるためには、

 広大な地下空間を移動しなくてはならないのです。

 東京の人の感覚でいうなら、東京駅を端から端まで歩いたり、

 品川駅で新幹線ホームから在来線ホームへと向かう感じでしょうか?

 あんまり分かんないですけど。

 きっと20分近く歩くことになるでしょう。

 そんな長距離を30kgの荷物を肩に担いでいくのは嫌なんです。

 冗談じゃなく、肩がもげるんです。

 ええ、今回も気合でなんば駅まで自転車で向かい、

 一時間かかるところを40分ですっ飛ばしてきましたよ。

 5分で分解して、10分で改札へと通り、

 何とか発車前に電車に飛び乗ることが出来ました。行き倒れるかと思いましたよ。

 近くに腰掛けているUSJの荷物を抱えた家族連れとはえらい違いです。

 僕は戦地にでも赴くのでしょうか?

 この沖縄旅行はきっと僕にとって、バカンスではなく、挑戦なのでしょう。

 沖縄ではしゃぎまくって、海も陸もしゃぶり尽くして、

 毎日運動しすぎて死んだように眠り、

 夏に計画している長距離サイクリングのために体を鍛えに鍛え、

 少しでも腹の油をへこます為の、修行の旅なのです。

 そんなことの為に大枚をはたいて、自分でもバカだと思います。

 きっと後で後悔することでしょう。

 でも、それでいいのです。

 後悔するのは後の自分に任せて、今は目の前の目標に夢中になりましょう。

 内なる自分の衝動に突き動かされましょう。

 今、この記事を書いているこの日に目にしたマンガからの引用ですが、

『美しいバカ』と書いて、『男!』と読むのです。


 一抹の後ろめたさを感じつつ、関西空港へと向かいました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ドワーフ・アルちゃん・減量戦記 @AL_chan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ