第26話

「違うんだ! これは拾っただけで誘拐などしていない!」


 いった数秒後、俺は既に後悔していた。


由衣はもはや驚きを通り越して、心配そうな顔で俺を見てくる。


やめてくれ! それでは、まるで俺が頭おかしいみたいじゃないか!


 おかしいのは佳穂だから、絶対!


「……お兄ちゃん…」


 由衣は今にも泣きそうなかすれた声でつぶやく。


「…由衣は…お兄ちゃんの事……信じていたのに…」


「違うんだ、由衣! 勘違いしないでくれ!」


「…勘違いなんかしていないよ。お兄ちゃんは…女の子を誘拐したんでしょ?」


 由衣は大粒の涙を流しながら、その場にうずくまってしまう。


「…お兄ちゃん…。由衣と一緒に…警察いこ…?」


 …どうしてこうなった…


「違うんだ、由衣! 俺の話を聞いてくれ!」


「…話? お兄ちゃんがロリコンだって話?」


「違う! これにはわけがあるんだ! とりあえず聞いてくれ!」


「…誘拐する理由…?」


「……。いいから聞け」


 

精神不安定な妹を落ち着かせながら、俺はここに至るまでの経緯を、ほぼ全て打ち明けた。

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