第29問 偏差値65を取れる?


 北辰テスト、5教科トータルの偏差値65。


 それが受験生の僕の目標だった。


 理由は私立の特待生になるため。


 姉がそうであるように、僕は私立の特待生に憧れがあった。


 でも、そのためには北辰テストで偏差値65以上を取らなければ、志望校の私立が出した特待生の条件をクリアできない。


 僕の内申書は9教科MAX「45」の中で「41」。条件をクリアできている。


 あとは北辰テストで結果を出すだけだ。


 でもそのチャンスはあと1回しかなかった。


 ここまでの僕は北辰テストでよくても偏差値62、3。

 社会は70以上、数学と理科が65くらいで偏差値を引き上げてくれてるけど、国語と英語がぱっとしない。


 それでも、あきらめたくない。

 まだチャンスがあるのだから。


 偏差値65を取ったことがない?

 なら次で取ればいいじゃないか!


 章宏あきひろに言ったらまた「捻り潰したくなる」って言われるかな……。


 でも生憎とこちとら大真面目に言ってるんだ。


 やってみないと分からない。


 シンプルだけど、それが真理や!


 そして運命の北辰テストが始まり――



     * * *



 私立志望の僕にとって最後の北辰テストで終わり――


「こんにちはー……」

「勇気……」


 今日も今日とて塾に来た僕を、入口にいた狐塚先生と栗原先生が出迎える。

 2人手元には茶封筒が。

 そしてその口からは、今日僕の家にも届いた北辰テストの結果表が顔を出していた。


 そっか……先生たちも、もう知ってるのか。

 くそ……。


「偏差値65突破おめでとう!」

「ありがとうございまぁああああああああああああっす!」


 そう、僕は最後の最後で遂に5教科合計で偏差値65を突破したのだ。

 土壇場で大逆転に、僕は興奮しまくった。

 受験するつもりはないけど他の私立高の評定もよくて、2倍嬉しい。


 1年生のとき壊滅的な学力だった僕に、こんな未来が待っているとは夢にも思わなかった。


 そして僕たち3年生は私立受験の日を迎えた。


 私立単願の僕はもうほとんど結果が出ているようなものだけど、やっぱり緊張する。


 そんな僕にテントリの先生たちから手紙が届くのだった。




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