3;中央要塞

第一小隊

ミカサの所属する連合軍一番のエリート集団、死神の異名を持つ連戦連勝の無敵の小隊である。

第二小隊との力の差が酷く、第一小隊の面々には大佐であっても逆らえない状態だった。


ミカサはその第一小隊の中でもさらに、ぴか一の乗り手だった。

それゆえ結構我が儘放題して、周りの兵士を混乱させている。

さらに、ミカサを怒らせた兵士が、瀕死の重傷を負ったのは最近のことである。


そのミカサが、言うことを聞いている、それだけで周りからは、稀有な事とし見られていた。



「この者と模擬線をして欲しい」

中佐が第一小隊の面々を集めていった


「はい!はい!はい!・・・私やる!」

手を上げてミカサが名乗りを上げる


「おい!ミカサがやったら1秒で終わっちまうんじゃないか?」


「さとるとだったら全力出せる!何時もみんなに合わせて加減しててさ、ストレスたまって他人にあたっちゃったんだよね・・・」

「おい!ミカサまだそんな事やッてんのか!?もう大人なんだから、誰構わず喧嘩売るのいい加減やめとけよ!」

さとるがミカサを往なす

「!おまえ、ミカサの何なんだ!」


「へへっ!さとるは私の婚約者だよ~ラブラブだよ」


「「「ええっ~」」」


(((だれだこのおんな)))


腑抜けた顔をしてさとるを見つめるミカサ

皆、狂犬みたいなミカサしか知らないので唖然としていた


「僕はいいですよ、久しぶりに勝負するか?」

「うんうん!指導よろしくお願いします」


「・・・ミカサが指導を受ける方?」


「いいですか?中尉」

「あ・・あぁ今から1時間後に小惑星帯にて行う」

「解りました」

さとるが敬礼する

慌ててミカサも敬礼する


その姿を見てまた皆が驚愕する、上官に敬礼する所なんて見たこと無かったからである


「ミカサ、機能全部使っていいぞ、ビームの子機使えなかったろう?」

「うーん、あれは集団行動には向かないね、単独かツインで動く時じゃないと、味方に当てちゃう」

「他に子機、使えるもの居るか?」

「舞、安部(あべ)舞(まい)が使えそうかな?1個飛ばして紛失させてる」


「え?私?」

「そうか・・・」


「タイマンだから、何でもアリで全力行くからね!」

嬉しそうなミカサ

「可愛いな~ミカサ!」

「!・・・やだ、さとるってば」

くねくねと体をゆらすミカサ


「「「「だれだこいつ」」」」





武蔵専用宇宙服に着替える為、更衣室に居ると第一部隊のナンバー2の、ジョン・テリーが入ってきた。


『てめえ調子に乗るなよ』

アメリカ人のジョンは青い目をぎらつかせて殴りかかってきた。


ひょいと避けて出された腕を軽く往なし、腕を掴んで、足を引っ掛けてすてんと転ばせた。


何が起こったのかわからないようできょとんとしているジョン。


『何やってんだ』

一緒に来ていただろう、第一部隊の一員同じくアメリカ人のトム・ブラウンが部屋に入ってきてジョンを起こして出て行った。


「なんだったんだろう?」


後で、ジョン・テリーがミカサにちょっかい掛けていたことを知った。

狂犬を抑えるのも彼の役目だったらしく、悔しかったのだろう・・・









小惑星帯に集結した僕とミカサそして試験教官3名

全員武蔵で出ている、ミカサの武蔵は”ミカサバージョン”ミカサに会わせて調整してある。


『模擬弾、模擬ビームエネルギーが無くなったら終了、

コックピットに被弾したら終了だ、それ以外に制限時間が3時間』



要塞ではその様子が精鋭部隊、10小隊全員が見ていた

ミカサの勇姿を見るためだ、崇拝して居るものいる。


大きなモニターに小惑星帯の試験会場全体と、コックピット内、武蔵の近接映像が映し出されていた。


開始の照明弾が打ち上げられた

「なっ!」

モニターの前の精鋭部隊の面々が目をむく


二人の背後のビーム子機が武蔵から放たれる!そしてもの凄いスピードで2機が小惑星を避ける。

もうカメラは2機を追えて居なかった、見えるのは微かに見える航跡とコックピット内の映像のみだった。


何時も戦闘中罵詈雑言吐いているいるミカサが殆ど無言で操縦している

『ちっはずした!』

たまに聞こえる声は、何時もは絶対聞かない言葉


「あいつの操縦の仕方」


誰かがさとるの手元が可笑しいのに気が付いた!


「ミカサもだ・・・」


サイドの操縦レバーからしょっちゅう手を離しているのだ

「操縦桿が勢いで 回転してる・・」

早すぎて持っていられないのだが、


呆然としている面々

二人の攻防を見ている、誰ももう語らない


3時間二人はひたすら戦った


照明弾が3つ上げられて模擬戦の終了を告げる


「両者引きわ「負けた―」け?」

試験官が言うのにかぶせて来たのはミカサだった


「はあはあ・・・熱い」

ヘルメットを外して汗を振るい落とす

その様子をモニターで見ていたミカサ崇拝者の女性が


「ミカサ様!色っぽい!素敵」


皆の感想を代弁していた


「ミカサ様が汗かいているところ見るの初めて・・・・」


「酷いなさとる!手加減するなんて」

「はぁ・・楽しめただろ?良いじゃないか!そうだ最後の勝負!要塞まで競争しようぜ」

「・・・良いわよ」


「試験官殿!先に戻ってますので!いくぞ!よーい、ドン!」


2機は勢いよく要塞に向かって猛スピードで飛んで行った

呆気に囚われている試験官


「おい!おまえら!」


もう二人の姿は試験官からは見えない

30分はかかるところ。10分で着いた二人


「勝った!」

着艦して定位置に武蔵を固定するとミカサはヘルメットを放り出し

さとるの機に向かって移動した


「ミカサ?」

ハッチを開けるとミカサが飛び込んできた

「さとるっん」

口づけしてくるミカサ


その様子はまだモニターに移っていた


「んっ・・ミカサ!」


長い長いデープキスをしていた二人が離れたのは、遅れて試験官が帰って来た時だった。


「さとる・・・」

熱い目でさとるを見るミカサ


「今日はこれで部屋に戻れば?ちゃんと上司に承諾を得てな、」

「うん分かった・・・さとる、後で来てね・・・・絶対よ」

「ああ、時間があれば行くから」

頭をポンポンと優しく叩くと嬉しそうに試験官の元に行って承諾を得ていた


モニターが切られた後も作戦室に残っている面々は2種類


「ミカサ様素敵!さとる様を愛してらっしゃるのね~あの熱いキス!もう一度見たいですわ!」

「ミゼット様、変な小説の読み過ぎです、それはミカサ様色っぽくて素敵でしたけど・・」


『あのやろう・・・俺のミカサに!』

『ジョン!逆だろ?ミカサがさとるに・・・・』

睨み付けろジョン、

トム・ブラウンはジョン・テリーの剣幕に少しビビった

トムは、さとるに良いようにあしらわれたジョンの様子を思い出していた

(敵うとは到底思えないけどな・・・あんな素直なミカサ見たことないもんな・・・)




上官の部屋に呼ばれたさとる

「本当に君は何者なんだ・・・」

中尉がボソッとため息交じりに言った

「ミゼット商会から 、”本人が2年更新すると決めたのなら仕方がないが、2年後には必ず五体満足で除隊させてもらう、さもないと・・・”・・・・と脅されたんだが」


「あーすみません・・・僕のフィギアに偉く執着されてまして」

「違うだろ!?そんなことで・・・」

「これが前にミゼット商会に出したフィギアとそのコンセプト設定書です」

「これは武蔵か?」

「何だこれは、武蔵の設計書?」

「設計書では無いです、それでは動きません・・・それを元に優秀な研究員が武蔵を作ったんです。」

上官らは、ミゼット商会の要望も無視できないので


「内勤は変わらない、どの部隊も君の受け入れを拒否してきた、歓迎しているのはミカサ君のみだ、しかしその腕!勿体ないので、有事の際は単独で出撃してもらう、それでいいか?」

「はい、指示に従います、ちなみにどの機体でも大丈夫なので、どのドックにも空きの武蔵を常備しといてください、有事の際は”幸運の男”の恩恵授けますよ~」


上官は絶句していた・・・・


さとるはミカサの部屋の前に来ていた

「結構部屋は離れたな、しょうが無いか・・エリートと内勤モブ兵士じゃ・・・」

部屋のチャイムを鳴らす、今から行くことはメールで伝えておいたから直ぐに扉は開いた

「さとる!」

抱き付いて、唇を奪うミカサ

そのまま部屋に入って行った


その様子を見ていたジョンとトムが居た

「ジョン!いい加減諦めろ」

唇をギュッと噛んで壁を叩く




「さとる?」

朝、汗でミカサの短いが額に張り付いていた、髪をさわるとミカサが起きた

「おはようミカサ、シャワー浴びといで、今日も訓練あるだろう?」

「んっ・・・もう少しこうしてたい」

素肌同士が心地いいと抱きついてくる

「うん、そんなにくっつくと・・・」

「うんいいよ」

また、唇を寄せて絡みついた



「大丈夫か?」

シャワーを浴びて軍服に着替えて身支度をする

「うん、大丈夫!うふっ・・・さとるは休みだっけ?」

「移動仕立てだからな、3日の休みだ、要塞を回るよ」


「・・・浮気しないでね・・・」

「・・・まぁそうだな、浮気はしないかな?」

じとっとにらむミカサ

でも上機嫌で訓練に向かっていった。


ミカサが出て行った後、自分も身支度を整えて、要塞の商業区に向 かって移動した


中央要塞は一つの都市だ、農業フロアに家畜フロア、工場に、学校、病院

商業フロアには、アパレルの店や、飲食店、飲み屋、大人向けの夜の店もあり、

映画館や遊戯施設も有る、この要塞で生まれ、要塞で死んでいったものも居る。


火星移住から400年、中央要塞の工事着工が300年前、やっと最近要塞が完成した所だった。

これからはメンテナンス工事が続くだろう。


さとるは商業フロアのお姉さんの居る店に来ていた

「久しぶりです、アンナさん」

「あら、さとるちゃん1年ぶり?」

「どうしたんです?」

「ああ、先日10分ほど無重力になって、店が荒れたので、片付けるのやっと終わったところなのよ」

「この区画は古いですからね、」

「本当に、10年後は再開発するそうで、新しい商業区に移るよう言われててね」

「そうですか・・・この店の感じ好きだったのに」


「あれ?除隊するって言って無かった?」

「2年延ばすことにしました。」

「あら嬉しいわ、また来てね、今日は、飲んでいくでしょう?」

「ええ、」


さとるは、きれいなお姉さんに囲まれ、お酒を飲んだ

(お酒は18からOK)


3日間、商業区をうろうろして遊んだ

携帯は、軍事以外を拒否にして居ていたが3日目それが鳴った


「!?有事は起きていないはず・・・」

コンピューターにアクセスできるさとるは有事が起きて無い事はわかっていた。


「さとる~!」

「!何ししとんじゃミカサ!軍の通信網つかうんじゃない!」

「くるしい・・・」

横で誰かのうめき声がしていた


頭を抱えるさとるだった





上司の部屋

「すみません・・・」

何故かさとるが頭を下げる

「被害は通信師一人が窒息寸前、警備員はろっ骨骨折に脳震盪」


「すんなり通してくれないからよ!」

「・・・本当に申し訳ありません・・・やはり中央勤務は無で、艦隊任務に移動できませんかね?」


「!さとる?なんで?」

「ミカサは僕が関わるとますます狂暴になり、僕に依存する傾向があります。」

「いや!さとる」

「・・・・いい加減にしろよミカサ、僕らは戦争をしてるんだ」

「・・・・・」

「お前のわがままで、仲間が傷ついた、僕はそれが許せない」

「さとるが拒否するから」


「僕は此処に来るまで最前線に居たんだ、もう勝ち目無いと皆が思う状態に、やっとの思いで安全な所に来た、3日間の休みを自分の時間として使っ たらだめなのか?狭い館内で人がひしめき合っていた、一人でのびのび気晴らししたらダメなのか?」

「さとる・・・」

「3日間好きに休むと言ったはずだが?」


「ミカサ少尉は3日間の謹慎、反省房に入ってもらう」

「え?嫌よ私がなんで!」

「それが良いと思います」

「さとる!?」

「もう20歳だろ?大人になれ、此処は軍隊ってこと忘れるな」


これは退職軍人が描いたノンフィクション小説だ読んどけ


そういって文庫本を渡した

恋愛小説だが、思いやりと会いにあふれた小説だった、

戦争で相手は死んでしまう、

それでも周りを愛しむ心を失わない元女性兵士の話だった。


書いたのは彼女の親友だった。


ミカサが読むかは分らない、自分がいかに恵まれて安全な所に要るのか分かってほしかった。


「さとる・・香水の臭いがする・・・」

じとっと睨まれる


そりゃキャバクラに行ったのを咎められるのが嫌だったのは認めるけど・・・・

僕の至福の時間を奪わないで貰いたいわ!



要塞の時間はアメリカ、ワシントンの時間に合わせてある

テレビからは、数ヶ月遅れの映像が流れている

要塞にもテレビ局は在るが、地球の映像の方がやはり面白い


配属先は技術部と言ってはいるが、雑用係だった。



「今日は第4層か」

コンピューターのケーブル異常発生か所に修理に来ている

探すのは無人ロボット、ロボットが治すときもあるが、やはり人間しか出来ない事もある。

暗く狭いケーブルだらけの所を二人で歩いている。

「宇宙服・・・一般のは動きにくいな」

「武蔵に乗ってたらそう思うだろうな、でもパイロット用は高いんだ」

「解ってますけど・・・でも作業しにくい・・・」


修理個所に来ると機械を背中から降ろして、作業にかかる

「ん?」

さとるはケーブルに触れると無意識に意識をケーブルに這わせていた

「どうした?」

「先輩、すみませんちょっと先も見てきていいですか?」

「好奇心か?そんなたいした作業じゃないから、見てきていいぞ、迷子になるなよ、この先に面白いものあるぞ」

「はい・・・」


さとるはボンベのメモリを確認して先に行く

暫く行くと開けた所に出た


そこはうっすらと光っていた、ケーブルが集中している中央管

「・・・・あ れか・・・」

さとるが見ていたのはそこにあるはずのないものだった


どうしたものかと考えていたら、作業が終わった先輩も来た

「どうした?腕組んで・・・」

「ありえない物を見つけまして」

「何だ?ケーブルしか見えな・・・・何だあれ」


「敵の機動人型戦闘機ですね・・・・」

「作りかけか?」

「部品で持ち込んで此処で組み立てているんでしょうね」

「しかし、1機とはいえ此処で暴れられたら・・・」

「ええ、大惨事ですね・・・」

「あれだけケーブルに隠れていたらロボットじゃ解らないか・・・人の目ってすごいな」


「・・・本当に、・・・・でも、此処にも監視カメラありましたよね・・・」

「あれだ」

指差した所のカメラは機動人型戦闘機とは違う方向を向いていた。

「古そうですね、1点監視カメラですね、今はもう360度監視カメラが主流ですから、それもわかってて此処なんでしょうね・・・・」

「直ぐ上に報告を」

「はい!」


上に報告すると、監視カメラを確認して3人のスパイを捕獲することが出来た。


中央の参謀副長官が後ろで糸を引いていたらしい、

中央の参謀副長官はとっくに捕まっているので、逃げ出す算段をしていた最中だった、もう少し気づくのが遅かったら逃げ出していただろう。


中央管の戦闘機は、技術部(僕ら)が解体することになった。

起爆装置も見つかっており、それは直ぐに解除したのだが、

期限を付けられ、24時間体制で分解した、多分ここまで組み立てるのに、1年はかかっているだろう、1週間で解体してやったぜ。


最近無重力になる地域が増えていたのはこれが原因だった。

通信機能は一等最初に組み立ててたんだろうな~エネルギー抵抗が火星と地球とでは違うから、エラーが起きていたんだろう・・はた迷惑なやつらだ







「うんんん~」

「ミカサ?まだ早朝だ、まだ寝てなよ」

「うんっさとる」


はだかで抱きついてくるミカサ

やさしく抱きしめる僕・・・

(可愛いなぁ・・・)


「明後日か・・・・・」


ミカサの出撃の日が決まった・・・結構大規模な戦闘になるだろう

さすがに、このスパイ攻撃に上は堪忍袋の尾が切れたらしい・・・


あの戦闘機が暴れていたら、要塞に住む人間がどれだけ犠牲になったか想像も出来ないからだ。




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