光の園


 光の渦の中、二人はしばらく美しい光の舞を眺めていた。

 抱き合い、目で語らい、ふれあいながら……。

 エレナの髪にふれる。額をよせる。視線がからむ。

 何度目かのくちづけをかわすと、思い出したようにエレナが言葉を漏らした。

「……いけない……。そういえばセリス様、どなたかをお待たせしているのでは?」

 セリスはそんな言葉を無視し、再度、唇を求める。軽い拒絶にあう。

「リューマ族長を待たせています」

「! まぁ……大変!」

 エレナは飛び上がらんばかりに驚いた。

「もう……私、時間の感覚がなくなっていました。でも、少なくても半日はうろうろしてしまったと思いますわ!」

 エレナの感覚では、もっと長い時間だった。


 過去へ……過去へと、長い夢を見ていたような気分だった。


 セリスは笑った。

「ここは私の属する世界です。空間も時も迷走しているかのように感じる。でも、私は帰る道を選べます。そうですね……半刻ほどで抜けましょうか?」

 エレナは、不思議そうにセリスを見つめた。

「私にとって、エーデムリングは迷宮ではない。出口は、三日後に通じているところもあるし、十日後もある。もちろん、半刻後も……。でも……」

 再び、セリスはエレナを引き寄せ、キスをした。


「ここを出ると、また迷宮。せめて、今少し憩わせてくれ」


 光は輪となり、花となり……。

 はじめてあった中庭にも似た空間で、二人の上に花冠が輝いた。




=迷宮にて・終わり=

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷宮にて =エーデムリング物語外伝= わたなべ りえ @riehime

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ